会社の執行役員を退任した者の退職慰労金

( 平成19年11月16日最高裁)

事件番号  平成19(受)478

 

この裁判では、

会社の執行役員を退任した者が会社に対し

退職慰労金の支払を請求することができないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人は,取締役の人数が多数に上り,

取締役会における経営判断を迅速に行い得ない面があったことなどから,

経営判断の適正迅速化,責任及び権限の明確化等を目的として,

執行役員の制度を導入することとし,平成12年4月,

取締役の人数を36名から10名に減少させるとともに,

事業分野,機能分野ごとに業務執行の責任及び

権限を有する32名の執行役員(うち4名は取締役兼務)を設けた。

 

(2) 同制度の下において,執行役員は,

従前は取締役が就いていた職務上の地位に就任し,

報酬額その他の待遇面においても,

従前の取締役と同等の待遇が保障されていた。

 

また,被上告人の執行役員規則によれば,

従業員であった者が執行役員に就任する場合,

いったん退職した上で,取締役会からの委任により執行役員に

就任することとされていた。

 

上告人も,従業員を退職して執行役員に就任するに当たり,

従業員としての退職金を受領したが,

その退職金額と上告人が執行役員在任中に得た報酬総額との合計額は,

上告人に対し旧規則所定の金額の退職慰労金が

支給されなかったとしても,上告人が執行役員に就任することなく

従業員の最高職位である部長職を4年間務めたと仮定した場合の

給与総額とその場合に受け取ることとなる従業員としての

退職金額との合計額を約3000万円上回るものであった。

 

(3) 被上告人における執行役員退職慰労金規則は,

代表取締役の決裁で作成,改定される内規であり,

実際にも頻繁に改定されてきたが,上告人の退職時まで,

その内容が執行役員に対して開示されたことはなかった

(同規則においては,これらの改定の前後を通じ,

同規則は退任する執行役員に対し退職慰労金を支給する場合に

適用するものと定められており,

これを必ず支給する旨の規定又は一定の要件の下に

支給する旨の規定は置かれていなかった。)。

 

(4) なお,被上告人が平成16年度及び

同17年度に退任する執行役員(上告人もこれに含まれる。)に対し

退職慰労金の支給を見送る措置を講じた

(これに合わせ旧規則も改定した)のは,

被上告人の関連会社における不祥事が顕在化して以降,

被上告人の業績が極めて悪化し,

資金が枯渇して経営破たんの危機に直面したことによるものであり,

上記措置と併せて,上記各年度に退任する取締役に対しても

退職慰労金の支給を見送るとともに,

取締役及び執行役員の報酬を30%ないし50%削減し,

従業員の給与も5%ないし10%削減する措置が講じられた。

 

3 上記事実関係の下においては,被上告人が退任する

執行役員に対して支給してきた退職慰労金は,

功労報償的な性格が極めて強く,執行役員退任の都度,

代表取締役の裁量的判断により

支給されてきたにすぎないものと認められるから,

被上告人が退任する執行役員に対し

退職慰労金を必ず支給する旨の合意や

事実たる慣習があったということはできず,

他に上告人に対し退職慰労金を支給すべき根拠も見当たらない。

 

そうすると,上告人は被上告人に対し,

旧規則所定の金額の退職慰労金の

支払を請求することはできないものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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