住民訴訟の許否

(平成10年7月3日最高裁)

事件番号  平成6(行ツ)53

 

最高裁判所の見解

住民訴訟につき、監査請求の前置を要することを定めている

地方自治法二四二条の二第一項は、住民訴訟は

監査請求の対象とした同法二四二条一項所定の財務会計上の行為又は

怠る事実についてこれを提起すべきものと定めているが、

同項には、住民が、監査請求において求めた具体的措置の相手方と

同一の者を相手方として右措置と同一の請求内容による

住民訴訟を提起しなければならないとする規定は存在しない。

 

また、住民は、監査請求をする際、監査の対象である

財務会計上の行為又は怠る事実を特定して、

必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り、

措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須ではなく、仮に、

執るべき措置内容等が具体的に明示されている場合でも、

監査委員は、監査請求に理由があると認めるときは、

明示された措置内容に拘束されずに

必要な措置を講ずることができると解されるから、

監査請求前置の要件を判断するために監査請求書に記載された

具体的な措置の内容及び相手方を

吟味する必要はないといわなければならない。

 

そうすると、住民訴訟においては、

その対象とする財務会計上の行為又は怠る事実について

監査請求を経ていると認められる限り、

監査請求において求められた具体的措置の相手方とは

異なる者を相手方として右措置の内容と異なる請求をすることも、

許されると解すべきである。

 

これを本件についてみると、

原審の確定した事実関係によれば、

本件監査請求においては財務会計上の行為として

Dによる本件契約の締結が明示されており、

本件訴えにおいてもその点に何ら変わりはないのであるから、

請求の内容及びその相手方が

監査請求におけるものと異なるからといって、

本件訴えが監査請求前置の要件に欠けるということはできず、

本件訴えは適法というべきである。

 

三 したがって、これと異なる見解に立って

本件訴えを却下した原審の判断は、

法令の解釈適用を誤ったものであり、

その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、

論旨はこの趣旨をいう限度で理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

そして、町議会の議決の要否、有無など本案について

更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。

 

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