保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効の中断

(平成18年11月14日最高裁)

事件番号  平成17(受)1594

 

この裁判では、

物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が

主債務者に送達された後に保証人が代位弁済をした上で

差押債権者の承継を執行裁判所に申し出たが承継の申出について

民法155条所定の通知がされなかった場合における

保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効の中断の有無について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

債権者が物上保証人に対して申し立てた不動産競売について,

執行裁判所が競売開始決定をし,

同決定正本が主債務者に送達された後に,

主債務者から保証の委託を受けていた保証人が,

代位弁済をした上で,債権者から物上保証人に対する

担保権の移転の付記登記を受け,

差押債権者の承継を執行裁判所に申し出た場合には,

上記承継の申出について主債務者に対して

民法155条所定の通知がされなくても,次のとおり,

上記代位弁済によって保証人が

主債務者に対して取得する求償権の消滅時効は,

上記承継の申出の時から上記不動産競売の

手続の終了に至るまで中断すると解するのが相当である。

 

ア 保証人は,上記代位弁済によって,主債務者に対して

求償権を取得するとともに,債権者が主債務者に対して

有していた債権(以下「原債権」という。)と

上記担保権を代位により取得するところ(民法501条),

原債権と上記担保権は,求償権を確保することを目的として

存在する付従的な性質を有するものであり

(最高裁昭和58年(オ)第881号同61年2月20日

第一小法廷判決・民集40巻1号43頁参照),

保証人の上記承継の申出は,代位により取得した原債権と

上記担保権を行使して,

求償権の満足を得ようとするものであるから,

これによって,求償権について,

時効中断効を肯認するための基礎となる

権利の行使があったものというべきである

(最高裁平成3年(オ)第1493号同7年3月23日

第一小法廷判決・民集49巻3号984頁参照)。

 

イ 物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が

主債務者に送達された場合には,原債権の消滅時効は,

同決定正本が主債務者に送達された時から上記不動産競売の

手続の終了に至るまで中断するが

(最高裁平成7年(オ)第374号同年9月5日第三小法廷判決・

民集49巻8号2784頁,最高裁平成5年(オ)第1788号

同8年7月12日第二小法廷判決・民集50巻7号1901頁参照),

このことは,途中で,代位弁済による差押債権者の承継があった場合も

異ならないので,差押債権者の承継は,一般に,

原債権の消滅時効について主債務者に不利益を生じさせるものではない。

 

そして,上記のとおり,原債権は求償権を確保することを

目的として存在するものであるから,このことは,

同時に求償権の消滅時効についても当てはまるものである。

 

また,保証人に保証の委託をしていた主債務者においては,

自ら弁済するなどして上記不動産競売の手続の進行を止めない限り,

保証人が代位弁済をして差押債権者の承継を申し出るということは,

当然に予測すべきことというべきである。

 

民法155条は,時効の利益を受ける者

(以下「時効受益者」という。)以外の者に対して

時効中断効を生ずる行為がされた場合に,

時効受益者が不測の不利益を被ることがないように,

上記行為があったことを時効受益者に通知すべきことを

定めた規定であるが(最高裁昭和47年(オ)

第723号同50年11月21日第二小法廷判決・

民集29巻10号1537頁参照),

既に物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本の送達を受けて

時効中断効を生ずる行為があったことの通知を受けている

時効受益者たる主債務者については,上記のとおり,

一般に差押債権者の承継によって原債権の消滅時効ひいては

求償権の消滅時効について不利益を被ることはなく,また,

保証人が代位弁済をして差押債権者の承継を申し出ることは

当然に予測すべきことであるから,

上記承継の申出があったことの通知を受けなければ

不測の不利益を被るということはできない。

 

そうすると,民法155条の法意に照らし,

上記承継の申出については,時効受益者たる

主債務者に対する時効中断の問題に関する限り,

主債務者に通知することを要しないというべきである。

 

ウ 以上によれば,前記の場合には,前記代位弁済によって

保証人が主債務者に対して取得する求償権の消滅時効は,

前記承継の申出の時から前記不動産競売の

手続の終了に至るまで中断するというべきである。

 

(2) 前記事実関係によれば,A信金が本件根抵当権に基づき

Cらに対して申し立てた本件競売について,

佐賀地方裁判所が競売開始決定をし,

同決定正本が主債務者であるBに送達された後に,

Bから保証の委託を受けていた上告人が,

平成9年12月25日に,

A信金に本件債務の残元本等の代位弁済をした上で,

A信金から本件根抵当権の一部移転の付記登記を受け,

平成10年1月6日に,同裁判所に債権届出書等を提出して

A信金の差押債権者の地位の一部承継を申し出て,

本件競売手続は,平成11年9月29日に終了したというのである。

 

そうすると,上告人が上記代位弁済によって

Bに対して取得した求償権の消滅時効は,

権利行使が可能となった平成9年12月25日に

いったん進行を開始したものの,

上告人が上記承継の申出をした平成10年1月6日から

本件競売手続が終了した平成11年9月29日まで中断し,

同日改めて進行を開始したというべきであるから,

本訴の提起された平成16年9月9日の時点では

いまだ完成していなかったというべきであり,

したがって,上告人の被上告人に対する

連帯保証債務履行請求権の消滅時効も

完成していなかったというべきである(民法457条1項)。

 

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