少年法一六条に基づく援助協力の依頼により捜査機関から送付を受けた証拠の存在を

附添人に了知させなかった措置が違法とはいえないとされた事例

(平成10年4月21日最高裁)

事件番号  平成9(し)240

 

最高裁判所の見解

記録によれば、本件は、二台のバイクに分乗した少年ら五名が、

大阪市平野区内の路上において、自転車に乗った塾帰りの

中学三年生四名から金銭を喝取し又は喝取しようとしたとされる

恐喝、同未遂保護事件であり、少年が犯人であることを否認して

全面的に争っている事案であるところ、原原審は、

捜査段階で少年らとの共謀を含む非行事実を認めた一名の

証人尋問を行った後、少年法一六条に基づき同証人の

捜査段階における取調べ状況等についての報告をするよう

警察署長及び検察官に援助協力を依頼してその回答を得たが、

少年の附添人には右依頼をしたことも回答を得たことも知らせないまま、

その回答の一部をも考慮して右証人の捜査段階に

おける供述の信用性を肯定し、他の証拠と併せて

非行事実を認定したことが明らかである。

 

本件のように少年が非行事実の存在を争っている保護事件においては、

その争点について、援助協力の依頼に応じた捜査機関から

送付を受けた証拠は、附添人が選任されている場合には、

特段の事情のない限り、その証拠の送付を受けた旨を附添人に

通知するのが相当であり、附添人が選任されていない場合には、

証拠の重要性に応じて、その内容の要点を少年に告げるなど

少年に防御の機会を与えるよう配慮した運用が望ましいが、

本件においては、捜査機関から送付を受けた回答の存在を

附添人に了知させなかったのであるから、

その措置は妥当性を欠いたものというほかない。

 

しかしながら、記録によれば、送付を受けた回答は、

附添人らがその内容を了知していた捜査書類を要約したもので、

援助協力の依頼の時点で既に捜査報告書にまとめられていたものとか、

前記証人が検察官に事実を認める供述をした際の様子を

記載したものなどであって、これらは、

証拠全体の中で重要な位置を占める性質のものとはいえず、

しかも、少年に対しては、審判全体を通じて、

前記証人に対する尋問を含む十分な防御の機会が保障され、

右回答の存在を知らなかったことにより

防御上特段の不利益を生じたともいえない。

 

このように、回答の重要性の程度、性質、審判全般における

少年の具体的な防御の状況等に照らして考えてみると、

原原審の措置をもっていまだ裁量の範囲を

逸脱した違法なものということはできないから、

原決定は結論において正当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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