保険契約

(平成21年6月4日最高裁)

事件番号  平成19(受)1987

 

この裁判では、

店舗総合保険契約に適用される普通保険約款中に,

保険の目的が受けた損害に対して支払われる水害保険金の支払額につき

上記損害に対して保険金を支払うべき他の保険契約があるときには

同保険契約に基づく保険給付と調整する旨の条項がある場合における,

同条項にいう「他の保険契約」の意義について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 本件約款14条4項は,

「第1条(保険金を支払う場合)第7項の損害に対して

保険金を支払うべき他の保険契約がある場合」に適用されるところ,

本件約款1条7項の損害は,

当該保険契約の保険の目的が受けた損害であるから,

上記の「他の保険契約」とは,

当該保険契約と保険の目的を同じくする保険契約を指すものであって,

当該保険契約と保険の目的を異にする保険契約はこれに該当しないことは,

約款の文言からして明らかなものというべきである。

 

(2) また,本件約款14条1項は,本件約款1条8項,10項,

12項又は13項所定の各費用(保険事故の発生に伴い被保険者が

支出を余儀なくされる費用)に対して保険金を支払うべき

他の保険契約がある場合に,上記各項に基づいて支払うべき保険金

(臨時費用保険金,失火見舞費用保険金,地震火災費用保険金又は

修理付帯費用保険金。以下「費用保険金」と総称する。)の額について,

本件約款14条4項と同様に,

他の保険契約との保険給付の調整を定めているが,

この場合における「他の保険契約」には,

「保険契約の保険の目的以外のものについて締結された保険契約」

が含まれることを文言上明示しているところ,同項には,

そのような文言はない。水害保険金は,

水災により保険の目的である財産が受けた損害をてん補するものであり,

同一の保険の目的に他の保険契約が重複して締結される場合には,

被保険者が各保険契約に基づき保険給付を受けることにより

実際に生じた損害の額を超える保険給付を受けて

利得を得る事態が生じ得るので,これを避けるため,

他の保険契約との間で保険給付の調整が必要となるが,

保険の目的を異にする保険契約が締結される場合には,

被保険者が各保険契約に基づき保険給付を受けても,

上記のような事態が生ずることはない。これに対して,

費用保険金は,保険事故の発生に伴って

被保険者が支出する損害調査費用,

見舞金等の費用をてん補するものであり,

上記費用は,その性質上,必ずしも

当該保険契約の保険の目的のみに固有に生ずるとは限らず,

保険の目的を異にする保険契約が締結される場合にも,

被保険者が各保険契約に基づき保険給付を受けることにより

実際に支出した費用の額を超える保険給付を受けて

利得を得る事態が生じ得ることになる。

 

水害保険金と費用保険金には,

上記のような保険給付の性質の相異があることからすると,

保険の目的を異にする保険契約が締結されている場合に,

費用保険金については他の保険契約との間で

保険給付の調整を図ることとし,水害保険金については

そのような保険給付の調整は図らないこととすることには,

実質的にみても,合理的な理由があるというべきである。

 

(3) そうすると,本件保険契約と保険の目的を異にする

別件保険契約は,本件約款14条4項にいう

「他の保険契約」には該当しないと解するのが相当であるから,

被上告人が上告人に支払うべき水害保険金について

同項は適用されないことになり,前記事実関係によれば,

その水害保険金の額は100万円であると認められる。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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