信用金庫の職員に預金の名目で小切手を詐取された者が信用金庫に損害賠償を請求した場合

(平成6年11月22日最高裁)

事件番号  平成3(オ)284

 

最高裁判所の見解

(一) 被用者の取引行為がその外形から見て

使用者の事業の範囲内に属すると認められる場合であっても、

それが被用者の職務権限内において適法に行われたものではなく、かつ、

その相手方が右の事情を知り又は重大な過失によってこれを知らなかったときは、

相手方である被害者は、使用者に対してその取引行為に基づく

損害の賠償を請求することはできないが

(最高裁昭和三九年(オ)第一一〇三号同四二年一一月二日第一小法廷判決・

民集二一巻九号二二七八頁参照)、ここにいう重大な過失とは、

取引の相手方において、わずかな注意を払いさえすれば、

被用者の行為がその職務権限内において

適法に行われたものでない事情を知ることができたのに、

漫然これを職務権限内の行為と信じたことにより、

一般人に要求される注意義務に著しく違反することであって、

故意に準ずる程度の注意の欠缺があり、

公平の見地上、相手方に全く保護を与えないことが

相当と認められる状態をいうのである

(最高裁昭和四三年(オ)第一三三二号同四四年一一月二一日第二小法廷判決・

民集二三巻一一号二〇九七頁参照)。

 

(二) 原審の確定事実によると、上告人A1は、

被上告人のI支店内の応接室において、

預金契約を締結する権限を有するD支店長代理に

預金の趣旨で本件小切手を交付し、

右入金が記帳された正規の預金通帳を交付されており、

その限度で正規の預金手続と異なるところはない。

 

そして、上告人A1は、

もともと正規の預金を勧誘されたものではないのであるから、

原判示のように、預金の条件や上告人A1及び

Dの預金手続時の態度、行動が通常の預金の場合とは異なっていたなど、

本件預金の勧誘から小切手の交付に至るまでの

一連の過程に正常な普通預金取引としては不自然な事情があったとしても、

これらの事情だけから、上告人A1に、

Dがその職務権限を逸脱して小切手の交付を

受けるものであることを知らないことにつき

故意に準ずる程度の注意の欠缺があって、公平の見地から、

上告人らに全く保護を与えないことが

相当と認められる状態にあったとまでいうことはできず、

過失相殺としてこれを斟酌すべきか否かは別として、

いまだ前記の重大な過失があると認めるには足りないものというべきである。

 

したがって、右事実関係の下において、

上告人A1の重大な過失を認めて、

上告人らの予備的請求をすべて棄却すべきものとした原審の判断には、

民法七一五条の解釈適用を誤り、ひいて審理不尽、

理由不備の違法があるものというほかなく、

この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

論旨は理由がある。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク