借地借家法20条1項後段の付随的裁判として敷金を差し入れるべき旨を定めその交付を命ずることの可否

(平成13年11月21日最高裁)

事件番号  平成13(許)20

 

最高裁判所の見解

土地の賃貸借における敷金は,賃料債務,

賃貸借終了後土地明渡義務履行までに

生ずる賃料額相当の損害金債務,その他賃貸借契約により

賃借人が賃貸人に対して負担することとなる

一切の債務を担保することを目的とするものである。

 

しかし,土地の賃借人が賃貸人に敷金を交付していた場合に,

賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転しても,

敷金に関する旧賃借人の権利義務関係は,

特段の事情のない限り,新賃借人に承継されるものではない

(最高裁昭和52年(オ)第844号同53年12月22日

第二小法廷判決・民集32巻9号1768頁参照)。

 

したがって,この場合に,賃借権の目的である土地の上の

建物を競売によって取得した第三者が土地の賃借権を取得すると,

特段の事情のない限り,賃貸人は敷金による担保を失うことになる。

 

そこで,裁判所は,上記第三者に対して法20条に基づく

賃借権の譲受けの承諾に代わる許可の裁判をする場合には,

賃貸人が上記の担保を失うことになることをも考慮して,

法20条1項後段の付随的裁判の内容を検討する必要がある。

 

その場合,付随的裁判が当事者間の利益の衡平を図るものであることや,

紛争の防止という賃借権の譲渡の許可の制度の目的からすると,

裁判所は,旧賃借人が交付していた敷金の額,

第三者の経済的信用,敷金に関する地域的な

相場等の一切の事情を考慮した上で,

法20条1項後段の付随的裁判の1つとして,

当該事案に応じた相当な額の敷金を差し入れるべき旨を定め,

第三者に対してその交付を命ずることが

できるものと解するのが相当である。

 

これを本件についてみるに,原審は,

付随的裁判をするに当たり,法20条1項後段に定める

付随的裁判として第三者に敷金の交付を命ずることは

許されないとの誤った解釈の下に,

付随的裁判の内容を判断したものであって,

この判断には,裁判に影響を及ぼすことが

明らかな法令の違反があるというべきである。

 

この趣旨をいう論旨は理由があり,原決定は破棄を免れない。

そして,以上説示したところに従い,改めて付随的裁判の内容について

審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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