借地権付き建物に対する強制競売において借地権が存在しなかった場合

(平成8年1月26日最高裁)

事件番号  平成5(オ)1054

 

最高裁判所の見解

建物に対する強制競売の手続において、

建物のために借地権が存在することを前提として

建物の評価及び最低売却価額の決定がされ、

売却が実施されたことが明らかであるにもかかわらず、

実際には建物の買受人が代金を納付した時点において

借地権が存在しなかった場合、買受人は、

そのために建物買受けの目的を達することができず、かつ、

債務者が無資力であるときは、民法五六八条一項、二項及び

五六六条一項、二項の類推適用により、

強制競売による建物の売買契約を解除した上、

売却代金の配当を受けた債権者に対し、

その代金の返還を請求することができるものと解するのが相当である。

 

けだし、建物のために借地権が存在する場合には、

建物の買受人はその借地権を建物に従たる権利として

当然に取得する関係に立つため、

建物に対する強制競売の手続においては、執行官は、

債務者の敷地に対する占有の権原の有無、権原の内容の

細目等を調査してその結果を現況調査報告書に記載し、

評価人は、建物価額の評価に際し、

建物自体の価額のほか借地権の価額をも加えた

評価額を算出してその過程を評価書に記載し、

執行裁判所は、評価人の評価に基づいて最低売却価額を定め、

物件明細書を作成した上、現況調査報告書及び評価書の写しを

物件明細書の写しと共に執行裁判所に備え置いて

一般の閲覧に供しなければならないものとされている。

 

したがって、現況調査報告書に建物のために借地権が

存在する旨が記載され、借地権の存在を考慮して

建物の評価及び最低売却価額の決定がされ、

物件明細書にも借地権の存在が明記されるなど、

強制競売の手続における右各関係書類の記載によって、

建物のために借地権が存在することを前提として

売却が実施されたことが明らかである場合には、

建物の買受人が借地権を当然に

取得することが予定されているものというべきである。

 

そうすると、実際には買受人が代金を納付した時点において

借地権が存在せず、買受人が借地権を取得することができないため、

建物買受けの目的を達することができず、かつ、

債務者が無資力であるときは、買受人は、

民法五六八条一項、二項及び五六六条一項、二項の類推適用により、

強制競売による建物の売買契約を解除した上、

売却代金の配当を受けた債権者に対し、

その代金の返還を請求することができるものと解するのが

右三者間の公平にかなうからである。

 

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