公文書非公開処分取消請求事件

(平成15年12月18日最高裁)

事件番号  平成12(行ヒ)16

 

本件条例9条2号本文にいう「個人に関する情報」は,

「事業を営む個人の当該事業に関する情報」が除外されている以外には

文言上何ら限定されていないから,個人の思想,信条,健康状態,

所得,学歴,家族構成,住所等の私事に関する情報に限定されるものではなく,

個人にかかわりのある情報であれば,

原則として上記「個人に関する情報」に当たると解するのが相当である。

 

もっとも,同条3号が,

「法人(国及び地方公共団体その他の公共団体を除く。)

その他の団体(以下「法人等」という。)に関する情報又は

事業を営む個人の当該事業に関する情報」について,

「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)」と

異なる類型の情報として非公開事由を規定していることに照らせば,

本件条例においては,法人等を代表する者が職務として

行う行為等当該法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報については,

専ら法人等に関する情報としての

非公開事由が規定されていると解するのが相当である。

 

また,本件条例は,県民の県政に対する理解と信頼を深め,

県政への参加をより一層促進し,

もって活力に満ちた公正で開かれた県政を推進することを目的とし,

そのために県民の公文書の公開を求める権利を明らかにするとともに(1条),

実施機関に対し,個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう

最大限の配慮をしつつも,県民の公文書の公開を求める権利を

十分に尊重して本件条例を解釈適用する責務を負わせている(3条)。

 

このような本件条例の目的,趣旨からすれば,本件条例が,

広島県の公務員の職務の遂行に関する情報が記録された公文書について,

公務員個人の社会的活動としての側面があることを理由に,

非公開とすることができるとしているとは解し難い。

 

また,国又は他の地方公共団体の公務員の職務の遂行に関する情報についても,

国又は当該地方公共団体において同様の責務を負うべき関係にあることから,

上記目的を達成するため,広島県の公務員の職務の遂行に関する情報と

同様に公開されてしかるべきものと

取り扱うというのが本件条例の趣旨であると解される。

 

したがって,国及び地方公共団体の公務員の職務の遂行に関する情報は,

公務員個人の私事に関する情報が含まれる場合を除き,

公務員個人が本件条例9条2号にいう

「個人」に当たることを理由に同号の

非公開情報に当たるとはいえないと解するのが相当である。

 

(2)前記事実関係によれば,

D幹事会の相手方出席者のうち各省庁の在籍者は,

在籍する省庁の職務と離れた個人的な立場から意見を交換し,

情報を提供するために出席したのではなく,

同幹事会において職務に関して広島県側から説明や要望を

受けるために出席したものということができる。

 

そうすると,非公開部分1に係る情報は,

国の公務員の職務の遂行に関する情報であり,

その私事に関する情報を含むものではないから,

本件条例9条2号本文にいう

「個人に関する情報」に当たらないというべきである。

 

他方,D幹事会の相手方出席者のうち各省庁のOBは,

かつて省庁に在職したという立場に基づいて出席したものである。

 

これらの者が,広島県側において各省庁に対して行う陳情や要望に

事実上の影響力を有するとしても,その出席に関する情報を

公務員の職務の遂行に関する情報と同一視することはできず,

非公開部分2に係る情報は,あくまでこれらの者の

個人的な社会的活動にかかわる情報であるといわざるを得ない。

 

また,非公開部分3に係る情報は,

E産業懇話会に出席した相手方にとっては,

その社会的活動にかかわる情報であるところ,

同懇話会の性質等からすると,

この相手方は,所属する会社,事業団,財団等のために

その職務の遂行として出席したのではなく,

いわば有識者として広島県の産業振興施策全般について

助言や意見交換を行うために出席したものであって,

その行為を所属する会社等の行為そのものと評価する余地はない。

 

したがって,非公開部分2及び3に係る情報は,

本件条例9条2号本文にいう「個人に関する情報」に当たり,

特定の個人が識別されるところ,

同号ただし書に該当する事実は確定されていない。

 

以上によれば,本件処分のうち

非公開部分2及び3を非公開とした部分に違法はなく,

これと異なる原審の上記部分に関する判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨は,これと同旨をいう限度で理由があり,

原判決中上記部分は破棄を免れない。

そして,この部分については,被上告人の請求を棄却すべきである。

 

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