公正証書の内容となる法律行為の法令違反等に関する公証人の調査義務

(平成9年9月4日最高裁)

事件番号  平成6(オ)1886

 

最高裁判所の見解

1 公証人法(以下「法」という。)は、

公証人は法令に違反した事項、無効の法律行為及び

無能力により取り消すことのできる法律行為について

公正証書を作成することはできない(二六条)としており、

公証人が公正証書の作成の嘱託を受けた場合における審査の対象は、

嘱託手続の適法性にとどまるものではなく、

公正証書に記載されるべき法律行為等の内容の適法性についても

及ぶものと解せられる。

 

しかし、他方、法は、公証人は正当な理由がなければ

嘱託を拒むことができない(同法三条)とする反面、

公証人に事実調査のための権能を付与する規定も、

関係人に公証人の事実調査に協力すべきことを

義務付ける規定も置くことなく、

公証人法施行規則(昭和二四年法務府令第九号)において、

公証人は、法律行為につき証書を作成し、

又は認証を与える場合に、その法律行為が有効であるかどうか、

当事者が相当の考慮をしたかどうか又は

その法律行為をする能力があるかどうかについて

疑いがあるときは、関係人に注意をし、かつ、

その者に必要な説明をさせなければならない(一三条一項)と

規定するにとどめており、このような法の構造にかんがみると、

法は、原則的には、公証人に対し、

嘱託された法律行為の適法性などを

積極的に調査することを要請するものではなく、

その職務執行に当たり、具体的疑いが生じた場合にのみ

調査義務を課しているものと解するのが相当である。

 

したがって、公証人は、公正証書を作成するに当たり、

聴取した陳述(書面による陳述の場合はその書面の記載)によって

知り得た事実など自ら実際に経験した事実及び

当該嘱託と関連する過去の職務執行の過程において

実際に経験した事実を資料として審査をすれば足り、

その結果、法律行為の法令違反、無効及び無能力による取消し等の

事由が存在することについて具体的な疑いが生じた場合に限って

嘱託人などの関係人に対して必要な説明を促すなどの

調査をすべきものであって、

そのような具体的な疑いがない場合についてまで

関係人に説明を求めるなどの積極的な調査を

すべき義務を負うものではないと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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