公課禁止とされている雇用対策法一三条に規定する職業転換給付金を標準としてされた課税処分の効力

(平成9年11月11日最高裁)

事件番号  平成7(行ツ)143

 

最高裁判所の見解

雇用保険法一二条が本件処分の違法の根拠たり得る規定でないことは、

原審の説示するとおりである。

 

しかし、上告人の前記主張によれば、上告人は高年齢者等の

雇用の安定等に関する法律に基づき生活費の支給を受けていたというのであるから、

右生活費というのは、同法一八条に規定する雇用対策法の規定に基づく

手当のことを指すものと解することができる。

 

そして、同法一三条は、求職者等に対し

職業転換給付金を支給することを規定しており、

これが右の手当に当たるところ、同法一七条は、

「租税その他の公課は、職業転換給付金

(事業主に対して支給するものを除く。)を

標準として、課することができない。」と規定しているから、結局、

右の手当については、これを標準として

租税を課することができないものというべきである。

 

そうすると、上告人が職業転換給付金の交付を受けていたとすれば、

これを所得とみて国民健康保険税の所得割額を課税することは許されず、また、

地方税法七〇三条の五第一項及び大東市市税条例

(昭和三一年大東市条例第三五号)一一〇条によれば、

総所得金額及び山林所得金額の合算額が所定の金額を超えない場合には、

国民健康保険税の被保険者均等割額及び世帯別平均割額を

減額するものとされているのであるから、

右総所得金額に職業転換給付金を含めて右規定を適用することも、

許されないものといわなければならない。

 

そして、雇用対策法一七条が、事業主に対して支給されるものを除く

職業転換給付金が求職者等の生活や

求職活動を支えるための給付であることを考慮して、

これに課税することを禁止していることに照らせば、

本件処分が右の各禁止に違反してされたとするならば、

本件処分には課税要件の根幹についての過誤があるものというべきであり、

徴税行政の安定とその円滑な運営の要請を斟酌しても、なお、

不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として

上告人に本件処分による不利益を甘受させることが著しく

不当と認められる例外的な事情のある場合に

該当するものというのが相当である

(最高裁昭和四二年(行ツ)第五七号同四八年四月二六日第一小法廷判決・

民集二七巻三号六二九頁参照)。

 

原審は、上告人が昭和六二年及び昭和六三年について

各一〇〇万円の給与所得があった旨を申告したと認定しているが、

上告人の前記主張に照らし、そこでいう給与所得なるものの全部又は

一部が職業転換給付金であった可能性を否定することができないのであって、

右申告の事実から直ちに、右給与所得があったとして各年度の

国民健康保険税額を計算すると本件処分の金額となることを理由として、

本件処分が法令にのっとって適法にされたものであると

即断することはできないものというべきである。

 

そうとすれば、上告人が雇用保険法一二条という誤った法条を指摘し、

雇用対策法一八条を援用しなかったからといって、

上告人の収入が実際に給与所得であったのかどうか、

殊に職業転換給付金を含むか否かを確定しないまま本件処分を

適法とした原審の判断には、審理不尽、理由不備の違法があり、

右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、

原判決は破棄を免れず、更に審理を尽くさせるため、

本件を原審に差し戻すべきである。

 

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