公金支出返還請求事件

(平成21年12月17日最高裁)

事件番号  平成21(行ヒ)162

 

この裁判は、

市が土地開発公社に対し土地の先行取得を委託する契約が,

私法上無効とはいえず,また市にその取消権又は

解除権があるとはいえないものの,著しく合理性を欠き,

そのためその締結に予算執行の適正確保の見地から

看過し得ない瑕疵が存する場合であっても,

市が上記公社の取得した上記土地を上記委託契約に基づく

義務の履行として買い取る売買契約を締結したことが

違法とはいえないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

前記事実関係等によれば,本件公社は市とは

別の法人格を有する主体であるところ,

本件委託契約及びその内容を定める業務方法書において,

市が自己都合により同契約を一方的に解消することが

できることをうかがわせる条項は存在しない。

 

したがって,市が本件公社に事実上の働きかけを真しに行えば,

本件公社において本件委託契約の解消に応ずる蓋然性が

大きかったというような事情が認められない限り,

客観的にみて市が本件委託契約を解消することができる

特殊な事情があったということはできないものと解される。

 

確かに,本件委託契約は上告人が市及び本件公社の双方を代表して

締結したものであり,上告人は本件売買契約締結当時も

市長と本件公社の理事長とを兼務していた。

 

しかしながら,本件公社は公拡法に基づき設立された

公共性の高い法人であるところ,仮に本件委託契約を解消して

本件公社が本件土地を引き受けることとした場合には,

本件公社がその取得金額と時価との差額を

損害として被ることとなるのであるから,

上告人が本件公社の理事長として

本件委託契約解消の申入れに応ずることは,

本件公社との関係では職務上の義務違反が

問われかねない行為である。

 

しかも,市は,本件公社の設立団体の一つにすぎず,

出資割合も基本財産の約14%を占めるにとどまり,また,

本件公社の運営上の重要事項は理事会が

議決するものとされているのであるから,

上告人が本件公社の理事長として上記解消につき

他の設立団体や理事の同意を取り付けることは

一層の困難が予想されるものというべきである。

 

他方,Aが本件売買契約の解消に応ずる見込みが大きいとか,

本件土地を第三者に本件売買契約の代金額相当額で売却することが

可能であるなどの事情があれば,本件公社においても

本件委託契約解消の申入れに応ずる

蓋然性が大きいということもできるが,

本件においてそのような事情が認められないことは,

前記事実関係等からも明らかである。

 

他に,本件公社が市からの本件委託契約解消の

申入れに応ずる蓋然性が大きいと認めるに足りる

事情は見いだし難い。

 

このように,本件において,客観的にみて市が

本件委託契約を解消することができる特殊な

事情があったとはいえないのであるから,

上告人は,市長として,有効な本件委託契約に基づく

義務の履行として本件土地を買い取るほかはなかったのであり,

本件土地を買い取ってはならないという

財務会計法規上の義務を負っていたということはできない。

 

したがって,本件売買契約が上告人に課されている

財務会計法規上の義務に違反して違法に

締結されたということはできないものと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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