共同不法行為者が負担する損害賠償債務と民法437条の適用の有無

(平成6年11月24日最高裁)

事件番号  平成4(オ)1814

 

最高裁判所の見解

民法七一九条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は、

いわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから、

その損害賠償債務については連帯債務に関する

同法四三七条の規定は適用されないものと解するのが相当である

(最高裁昭和四三年(オ)第四三一号同四八年二月一六日第二小法廷判決・

民集二七巻一号九九頁参照)。

 

原審の確定した事実関係によれば、上告人とDとの間においては、

平成元年六月二七日本件調停が成立し、その条項において、

両名間の子の親権者を上告人とし、

Dの上告人に対する養育費の支払、財産の分与などが約されたほか、

本件条項が定められたものであるところ、右各条項からは、

上告人が被上告人に対しても前記免除の効力を及ぼす意思であったことは

何らうかがわれないのみならず、記録によれば、

上告人は本件調停成立後四箇月を経過しない間の

平成元年一〇月二四日に被上告人に対して

本件訴訟を提起したことが明らかである。

 

右事実関係の下では、上告人は、本件調停において、

本件不法行為に基づく損害賠償債務のうち

Dの債務のみを免除したにすぎず、

被上告人に対する関係では、

後日その全額の賠償を請求する意思であったものというべきであり、

本件調停による債務の免除は、被上告人に対して

その債務を免除する意思を含むものではないから、

被上告人に対する関係では何らの効力を有しないものというべきである。

 

そうすると、右と異なる見解に立って上告人の請求を

一部棄却した原判決は、共同不法行為者に対する

債務の免除の効力に関する法理の解釈適用を誤ったものであり、

この違法が原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

 

この趣旨をいう論旨は理由があり、

原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。

 

そして、以上に判示したところによれば、

上告人の本件損害賠償請求はすべて理由があることになり、

これと結論を同じくする第一審判決は正当であるから、

右部分に対する控訴は理由がなくこれを棄却すべきものである。

 

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