共有者の一人による共有物の変更と他の共有者からの原状回復請求の可否

(平成10年3月24日最高裁)

事件番号  平成8(オ)551

 

最高裁判所の見解

共有者の一部が他の共有者の同意を

得ることなく共有物を物理的に損傷しあるいは

これを改変するなど共有物に変更を加える行為をしている場合には、

他の共有者は、各自の共有持分権に基づいて、

右行為の全部の禁止を求めることができるだけでなく、

共有物を原状に復することが不能であるなどの

特段の事情がある場合を除き、

右行為により生じた結果を除去して

共有物を原状に復させることを求めることも

できると解するのが相当である。

 

けだし、共有者は、自己の共有持分権に基づいて、

共有物全部につきその持分に応じた

使用収益をすることができるのであって(民法二四九条)、

自己の共有持分権に対する侵害がある場合には、

それが他の共有者によると第三者によるとを問わず、

単独で共有物全部についての妨害排除請求をすることができ、

既存の侵害状態を排除するために必要かつ相当な作為又は

不作為を相手方に求めることができると解されるところ、

共有物に変更を加える行為は、共有物の性状を

物理的に変更することにより、他の共有者の共有持分権を

侵害するものにほかならず、他の共有者の同意を得ない限り

これをすることが許されない(民法二五一条)からである。

 

もっとも、共有物に変更を加える行為の具体的態様及び

その程度と妨害排除によって相手方の受ける

社会的経済的損失の重大性との対比等に照らし、あるいは、

共有関係の発生原因、共有物の従前の利用状況と変更後の

状況、共有物の変更に同意している共有者の数及び持分の割合、

共有物の将来における分割、帰属、利用の可能性その他諸般の事情に照らして、

他の共有者が共有持分権に基づく妨害排除請求をすることが

権利の濫用に当たるなど、

その請求が許されない場合もあることはいうまでもない。

 

これを本件についてみると、前記事実関係によれば、

本件土地は、遺産分割前の遺産共有の状態にあり、

畑として利用されていたが、被上告人は、

本件土地に土砂を搬入して地ならしをする宅地造成工事を行って、

これを非農地化したというのであるから、

被上告人の右行為は、共有物たる本件土地に変更を加えるものであって、

他の共有者の同意を得ない限り、これをすることができないというべきところ、

本件において、被上告人が右工事を行うにつき他の共有者の同意を

得たことの主張立証はない。

 

そうすると、上告人は、本件土地の共有持分権に基づき、

被上告人に対し、右工事の差止めを求めることができるほか、

右工事の終了後であっても、本件土地に搬入された

土砂の範囲の特定及びその撤去が可能であるときには、

上告人の本件請求が権利濫用に当たるなどの特段の事情がない限り、

原則として、本件土地に搬入された

土砂の撤去を求めることができるというべきである。

 

四 そうすると、被上告人が本件土地につき共有持分権に基づく

使用権原を有しているとの一事をもって、

上告人からの共有持分権に基づく本件請求を棄却すべきものとした

原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、

この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨はその趣旨をいうものとして理由があり、

原判決中、上告人の本件請求を棄却した部分は破棄を免れず、

本件においては、前記説示に照らして

本件請求の当否につき更に審理を尽くさせる必要があるため、

右破棄部分につきこれを原審に差し戻すのが相当である。

 

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