共通法2条2項,共通法3条,朝鮮民事令1条,朝鮮民事令11条

(平成10年3月12日最高裁)

事件番号  平成6(行ツ)109

 

最高裁判所の見解

1 韓国併合後も、朝鮮は異法地域とされ、かつ、

法的規律が朝鮮慣習にゆだねられていた分野が多かったことからすると、

朝鮮慣習の法的効力を判断するに当たり、

明治四五年勅令第二一号によって朝鮮に施行されていた法例二条にいう

「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」とは、

朝鮮地域における公序良俗を指すものと解すべきであり、

内地におけるそれに基づいて当該慣習の効力を判断すべきではない。

 

そして、本件認知後である昭和三三年に公布された

大韓民国民法も家制度を維持していたことなどからすると、

前記の朝鮮慣習が本件認知当時の朝鮮地域における公序良俗に

反するということはできない。

 

したがって、原審の(一)の判断は是認することができない。

 

2 法例三〇条は、「外国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其規定カ公ノ秩序又ハ

善良ノ風俗ニ反スルトキハ之ヲ適用セス」と定めているが、

この規定の趣旨は、当該準拠法に従うならば、

内国の私法的社会秩序を危うくするおそれがある場合に、

右準拠法の適用を排除することにあり、したがって、

外国法の規定内容そのものが我が国の公序良俗に反するからといって

直ちにその適用が排除されるのではなく、

個別具体的な事案の解決に当たって外国法の規定を適用した結果が

我が国の公序良俗に反する場合に限り、

その適用が排除されるものと解すべきである。

 

この理は、共通法二条二項において準用する法例三〇条の適用に当たっても

同様というべきであり、朝鮮地域の法令の規定自体が

内地の公序良俗に反することによって直ちに

その適用が排除されるものではなく、

朝鮮地域の法令の規定を具体的事案に適用した結果が

内地の公序良俗に反するか否かを検討する必要がある。

 

原審は、朝鮮慣習が家制度に立脚しているから、

日本国憲法が立脚する個人の尊厳と両性の

本質的平等と相いれないなどと説示したのみで、

右朝鮮慣習によることを定める朝鮮民事令一一条等の適用を排除しているが、

家の制度が日本国憲法及び新民法施行後の我が国の公序に反するからといって、

直ちに当該朝鮮法令を準拠法として

適用することが許されなくなるわけではなく、

原審の(二)の判断には、法例三〇条の解釈適用を

誤った違法があるといわざるを得ない。

 

右の観点から本件をみるに、本件認知によって庶子となった子が

朝鮮民事令一一条により朝鮮慣習の適用を受けて父の家に入るとすれば、

共通法三条等により、子は父の朝鮮戸籍に入り、

内地から朝鮮への地域籍の変動を生ずること(その結果、国籍の変動を生ずること)にもなる。

 

しかし、父に認知された際に、非嫡出子が母の戸籍にとどまるものとするか、

父の戸籍に入籍するものとするかは、基本的には立法政策の問題であって、

そのこと自体が直ちに個人の尊厳ないし男女平等主義に反するという

ことはできない。

 

これを地域籍ないし国籍の変動の問題としてとらえてみても、

当時、施行されていた旧国籍法二三条は、子が認知によって

父の国の国籍を取得した場合に日本の国籍を喪失する旨を

規定していたところであり、このような規定にもかんがみると、

認知により母の地域籍を去って父の地域籍に入ることは、

平和条約の発効によって日本の国籍を喪失することにつながるとしても、

内地の公序良俗に反するとまでいうことはできない。

 

そうすると、本件認知により被上告人が

朝鮮人父の戸籍(地域籍)に入るということが

内地の公序良俗に反するということはできないものと解するのが相当である。

 

なお、当時日本国内に施行されていた新民法及び

戸籍法には子が父の戸籍に入ることを禁止する規定はなく、

当時の旧国籍法二三条及び戸籍法二三条の規定にもかんがみると、

被上告人が、内地の法令上家を去ることを得ざる者に当たるとして、

共通法三条二項により朝鮮戸籍に入ることができないと解することはできず、

被上告人は、本件認知によって、

内地戸籍から除かれるべき者となったというべきである。

 

3 以上によれば、共通法三条の適用の結果、

本件認知により被上告人が日本の国内法上朝鮮人としての

法的地位を取得したことを否定することはできず、

被上告人は、平和条約の発効とともに

日本国籍を失ったものといわざるを得ない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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