処分の差止めの訴えについて行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」

(平成24年2月9日最高裁)

事件番号  平成23(行ツ)177等

 

この裁判では、

処分の差止めの訴えについて行政事件訴訟法37条の4第1項所定の

「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる場合について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

ア 法定抗告訴訟たる差止めの訴えの訴訟要件については,まず,

一定の処分がされようとしていること(行訴法3条7項),

すなわち,行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があることが,

救済の必要性を基礎付ける前提として必要となる。

 

本件差止めの訴えに係る請求は,本件職務命令の違反を理由とする

懲戒処分の差止めを求めるものであり,具体的には,

免職,停職,減給又は戒告の各処分の差止めを求める請求を

内容とするものである。

 

そして,本件では,第1の2(3)ウのとおり,

本件通達の発出後,都立学校の教職員が本件職務命令に違反した場合の

都教委の懲戒処分の内容は,おおむね,

1回目は戒告,2回目及び3回目は減給,4回目以降は停職となっており,

過去に他の懲戒処分歴のある教職員に対しては

より重い処分量定がされているが,

免職処分はされていないというのであり,従来の処分の程度を超えて

更に重い処分量定がされる可能性をうかがわせる事情は存しない以上,

都立学校の教職員について本件通達を踏まえた本件職務命令の違反に対しては,

免職処分以外の懲戒処分(停職,減給観点から,

そのような判断と措置を事前に行わなければならないだけの

救済の必要性がある場合であることを要するものと解される。

 

したがって,差止めの訴えの訴訟要件としての

上記「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには,

処分がされることにより生ずるおそれのある損害が,

処分がされた後に取消訴訟等を提起して

執行停止の決定を受けることなどにより

容易に救済を受けることができるものではなく,

処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を

受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。

 

本件においては,前記第1の2(3)のとおり,

本件通達を踏まえ,毎年度2回以上,

都立学校の卒業式や入学式等の式典に際し,

多数の教職員に対し本件職務命令が繰り返し発せられ,

その違反に対する懲戒処分が累積し加重され,

おおむね4回で(他の懲戒処分歴があれば3回以内に)

停職処分に至るものとされている。

 

このように本件通達を踏まえて懲戒処分が

反復継続的かつ累積加重的にされる危険が現に存在する状況の下では,

事案の性質等のために取消訴訟等の判決確定に至るまでに

相応の期間を要している間に,毎年度2回以上の各式典を

契機として上記のように懲戒処分が反復継続的かつ

累積加重的にされていくと事後的な損害の回復が

著しく困難になることを考慮すると,

本件通達を踏まえた本件職務命令の違反を理由として

一連の累次の懲戒処分がされることにより生ずる損害は,

処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより

容易に救済を受けることができるものであるとはいえず,

処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ

救済を受けることが困難なものであるということができ,

その回復の困難の程度等に鑑み,本件差止めの訴えについては

上記「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるというべきである。

 

ウ また,差止めの訴えの訴訟要件については,

「その損害を避けるため他に適当な方法があるとき」ではないこと,

すなわち補充性の要件を満たすことが必要であるとされている

(行訴法37条の4第1項ただし書)。

 

原審は,本件通達が行政処分に当たるとした上で,

その取消訴訟等及び執行停止との関係で補充性の要件を欠くとして,

本件差止めの訴えをいずれも却下したが,本件通達及び本件職務命令は

前記1(2)のとおり行政処分に当たらないから,

取消訴訟等及び執行停止の対象とはならないものであり,また,

上記イにおいて説示したところによれば,

本件では懲戒処分の取消訴訟等及び執行停止との

関係でも補充性の要件を欠くものではないと解される。

 

以上のほか,懲戒処分の予防を目的とする事前救済の争訟方法として

他に適当な方法があるとは解されないから,

本件差止めの訴えのうち

免職処分以外の懲戒処分の差止めを求める訴えは,

補充性の要件を満たすものということができる

 

エ なお,在職中の教職員である前記1(1)の上告人らが

懲戒処分の差止めを求める訴えである以上,

上記上告人らにその差止めを求める法律上の利益

(行訴法37条の4第3項)が認められることは明らかである。

 

オ 以上によれば,被上告人らに対する本件差止めの訴えのうち

免職処分以外の懲戒処分の差止めを求める訴えは,

いずれも適法というべきである。

 

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