刑法247条にいう「他人のためにその事務を処理する者」
(平成15年3月18日最高裁)
事件番号 平成11(あ)941
最高裁判所の見解
原判決が是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,
A株式会社の代表取締役として,B相互会社から
合計1億1800万円の融資を受け,その担保として
同社のために株式を目的とする質権を設定し,
同社に株券を交付していたところ,返済期を過ぎても
融資金を返済せず,A株式会社の利益を図る目的で,
質入れした上記株券を紛失したとの虚偽の理由により
除権判決の申立てをし,同判決を得て上記株券を失効させ,
質権者に財産上の損害を加えたというのである。
株式を目的とする質権の設定者は,株券を質権者に交付した後であっても,
融資金の返済があるまでは,当該株式の担保価値を保全すべき任務を負い,
これには,除権判決を得て当該株券を失効させてはならないという
不作為を内容とする任務も当然含まれる。
そして,この担保価値保全の任務は,
他人である質権者のために負うものと解される。
したがって,質権設定者がその任務に背き,
質入れした株券について虚偽の申立てにより
除権判決を得て株券を失効させ,
質権者に損害を加えた場合には,
背任罪が成立するというべきであるから,
これと同旨の見解の下に,被告人が刑法247条にいう
「他人のためにその事務を処理する者」に当たるとして
背任罪の成立を認めた原判決の判断は,正当である。
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