刑訴法328条により許容される証拠
( 平成18年11月7日最高裁)
事件番号 平成17(あ)378
最高裁判所の見解
刑訴法328条は,公判準備又は公判期日における被告人,証人
その他の者の供述が,別の機会にしたその者の供述と矛盾する場合に,
矛盾する供述をしたこと自体の立証を許すことにより,
公判準備又は公判期日におけるその者の供述の信用性の
減殺を図ることを許容する趣旨のものであり,
別の機会に矛盾する供述をしたという事実の立証については,
刑訴法が定める厳格な証明を要する趣旨であると解するのが相当である。
そうすると,刑訴法328条により許容される証拠は,
信用性を争う供述をした者のそれと矛盾する内容の供述が,
同人の供述書,供述を録取した書面
(刑訴法が定める要件を満たすものに限る。),
同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又は
これらと同視し得る証拠の中に
現れている部分に限られるというべきである。
本件書証は,前記足立の供述を録取した書面であるが,
同書面には同人の署名押印がないから上記の供述を録取した書面に当たらず,
これと同視し得る事情もないから,
刑訴法328条が許容する証拠には当たらないというべきであり,
原判決の結論は正当として是認することができる。
したがって,刑訴法410条2項により,
所論引用の判例を変更し,原判決を維持するのを
相当と認めるから,所論の判例違反は,結局,原判決破棄の理由にならない。
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