利息制限法1条1項、民法136条、貸金業の規制等に関する法律43条1項

(平成18年1月19日最高裁)

事件番号  平成15(オ)456

 

この裁判は、

債務者が利息制限法所定の制限を超える約定利息の

支払を遅滞したときには当然に

期限の利益を喪失する旨の特約の効力について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1)法43条1項は,貸金業者が業として行う

金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,

債務者が利息として支払った金銭の額が利息の制限額を超え,

利息制限法上,その超過部分(以下「制限超過部分」という。)につき,

その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,

貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び

18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守しているときには,

その支払が任意に行われた場合に限って,

例外的に,利息制限法1条1項の規定にかかわらず,

制限超過部分の支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めたものである。

 

このような法43条1項の規定の趣旨にかんがみると,

同項の適用に当たっては,制限超過部分の支払の任意性の要件は,

明確に認められることが必要である。

 

法21条1項に規定された行為は,貸金業者として

最低限度行ってはならない態様の取立て行為を

罰則により禁止したものであって,

貸金業者が同項に違反していないからといって,

それだけで直ちに債務者がした

制限超過部分の支払の任意性が認められるものではない。

 

そうすると,法43条1項にいう

「債務者が利息として任意に支払った」とは,

債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上,

自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい,

債務者において,その支払った金銭の額が利息の制限額を

超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで

認識していることを要しないと解するのが相当である

(最高裁昭和62年(オ)第1531号平成2年1月22日

第二小法廷判決・民集44巻1号332頁参照)が,

債務者が,事実上にせよ強制を受けて

利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には,

制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず,

法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。

 

そして,債務者が制限超過部分を

自己の自由な意思によって支払ったか否かは,

金銭消費貸借契約証書や貸付契約説明書の文言,契約締結及び

督促の際の貸金業者の債務者に対する説明内容などの具体的事情に基づき,

総合的に判断されるべきである。

 

(2) ところで,本件期限の利益喪失特約が

その文言どおりの効力を有するとすると,

Dは,支払期日に制限超過部分を含む約定利息の支払を怠った場合には,

元本についての期限の利益を当然に喪失し,

残元本全額及び経過利息を直ちに一括して支払う義務を負うことになる上,

残元本全額に対して年39.80%の割合による

遅延損害金を支払うべき義務も負うことになる。

 

しかし,このような結果は,Dに対し,

期限の利益を喪失する等の不利益を避けるため,

本来は利息制限法1条1項によって支払義務を負わない

制限超過部分の支払を強制することとなるから,

同項の趣旨に反し容認することができず,

本件期限の利益喪失特約のうち,

Dが支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に

期限の利益を喪失するとする部分は,同項の趣旨に反して無効であり,

Dは,支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば,

制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益を喪失することはなく,

支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,

期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。

 

そして,本件期限の利益喪失特約は,法律上は,

上記のように一部無効であって,制限超過部分の支払を怠ったとしても

期限の利益を喪失することはないけれども,

旧契約書等及び本件契約書等における本件期限の利益喪失特約の文言は,

通常,債務者に対し,支払期日に約定の元本と共に

制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り,

期限の利益を喪失し,残元本全額を直ちに一括して支払い,

これに対する年39.80%の割合による

遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え,

その結果,このような不利益を回避するために,

制限超過部分を支払うことを債務者に

事実上強制することになるものというべきである。

 

したがって,本件期限の利益喪失特約の下で,

債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,

上記のような誤解が生じなかったといえるような

特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって

制限超過部分を支払ったものということはできない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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