利息制限法1条1項,民法136条

(平成18年1月24日最高裁)

事件番号  平成16(受)424

 

この裁判では、

債務者が利息制限法所定の制限を超える

約定利息の支払を遅滞したときには

当然に期限の利益を喪失する旨の特約の効力について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

貸金業法43条1項は,貸金業者が業として行う

金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,

債務者が利息として任意に支払った金銭の額が利息の制限額を超え,

利息制限法上,制限超過部分につき,

その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,

貸金業に係る業務規制として定められた貸金業法17条1項及び

18条1項所定の各要件を具備した

各書面を交付する義務を遵守したときには,

利息制限法1条1項の規定にかかわらず,

その支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。

 

貸金業者の業務の適正な運営を確保し,

資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,

貸金業に対する必要な規制等を定める貸金業法の趣旨,目的と,

同法に上記業務規制に違反した場合の罰則が

設けられていること等にかんがみると,

同法43条1項の規定の適用要件については,

これを厳格に解釈すべきものである。

 

貸金業法43条1項の規定の適用要件として,

貸金業者は同法17条1項所定の事項を

記載した書面(以下「17条書面」という。)を

貸付けの相手方に交付しなければならないものとされており,また,

貸金業者は同法18条1項所定の事項を

記載した書面(以下「18条書面」という。)を

弁済をした者に交付しなければならないものとされているが,

17条書面及び18条書面には同法17条1項及び18条1項所定の事項の

すべてが記載されていることを要するものであり,

それらの一部が記載されていないときは,

同法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきであって,

有効な利息の債務の弁済とみなすことはできない

(最高裁平成14年(受)第912号同16年2月20日第二小法廷判決・

民集58巻2号380頁,最高裁平成15年(オ)第386号,

同年(受)第390号同16年2月20日第二小法廷判決・

民集58巻2号475頁参照)。

 

そして,貸金業法17条1項が,貸金業者につき,

貸付けに係る契約を締結したときに,

17条書面を交付すべき義務を定め,また,

同法18条1項が,貸金業者につき,

貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について

弁済を受けたときに,18条書面を交付すべき義務を定めた趣旨は,

貸付けに係る合意の内容や弁済の内容を書面化することで,

貸金業者の業務の適正な運営を確保するとともに,

後日になって当事者間に貸付けに係る合意の内容や

弁済の内容をめぐって紛争が発生するのを

防止することにあると解される。

 

したがって,17条書面及び18条書面の

貸金業法17条1項及び18条1項所定の事項の記載内容が正確でないときや

明確でないときにも,同法43条1項の規定の

適用要件を欠くというべきであって,

有効な利息の債務の弁済とみなすことはできない。

 

(2)17条書面には「貸付けの金額」を記載しなければならないが

(貸金業法17条1項3号),前記事実関係によれば,

本件②~⑩,⑫,⑬貸付けの各借用証書には,

「契約手渡金額」欄があり,同欄の下部には,

「上記のとおり借用し本日この金員を受領しました。」

との記載があるにもかかわらず,上記「契約手渡金額」欄には,

上記各貸付けに係る契約の際に被上告人から上告人らに

実際に手渡された金額ではなく,実際に手渡された金額と

その直前の貸付金の残元本の金額との合計金額が

記載されていたというのであるから,

これらの借用証書の上記事項の記載内容は正確でないというべきである。

 

そうすると,これらの借用証書の写しの交付をもって,

本件②~⑩,⑫,⑬貸付けについて17条書面の交付が

されたものとみることはできない。

 

このことは,借用証書に別途従前の

貸付けの債務の残高が記載されているとしても,

左右されるものではない。これと異なる原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

(3)17条書面には「各回の返済期日及び返済金額」を

記載しなければならないが(貸金業法17条1項8号

(平成12年法律第112号による改正前のもの),

貸金業の規制等に関する法律施行規則

(以下「施行規則」という。)13条1項1号チ),

前記事実関係によれば,本件①~⑦貸付けの各借用証書においては,

集金休日の記載がされていなかったというのであるから,

これらの借用証書の上記事項の記載内容は正確でなく,また,

本件⑧~⑪貸付けの各借用証書においては,

「その他取引をなさない慣習のある休日」を

集金休日とする旨の記載がされていたというのであるから,

これらの借用証書の上記事項の記載内容は明確でないというべきである。

 

そうすると,これらの借用証書の写しの交付をもって,

本件①~⑪貸付けについて17条書面の交付が

されたものとみることはできない。

 

このことは,これらの借用証書に記載されていない期日を

集金休日とすることについて,

被上告人があらかじめ上告人らに連絡しており,

上告人らがかかる取扱いについて格別の異議を述べていなかったとしても,

左右されるものではない。これと異なる原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

18条書面には「受領金額及びその利息,賠償額の予定に基づく

賠償金又は元本への充当額」を記載しなければならないが

(貸金業法18条1項4号),前記事実関係によれば,

被上告人が本件⑨貸付けの弁済を平成10年12月24日に受けた

際に上告人A1に対して交付した同日付けの領収書においては,

受領金額の記載が誤っていたというのであるから,

この領収書の上記事項の記載内容は正確でないというべきである。

 

そうすると,この領収書の交付をもって,

本件⑨貸付けの平成10年12月24日の弁済について

18条書面の交付がされたものとみることはできない。

 

このことは,被上告人においてあえて

虚偽の金額を記載したわけではなく,

また,上記誤記が上告人A1に不利益を被らせるものでなかったとしても,

左右されるものではない。

 

これと異なる原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

以上によれば,上記の諸点についての論旨はいずれも理由があり,

原判決は破棄を免れない。

 

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