労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い又は同条3号の支配介入

(平成24年2月23日最高裁)

事件番号  平成22(行ヒ)52

 

この裁判は、

旅客鉄道事業等を営む会社である使用者が

労働者を運転士に発令しなかったことが,

労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い又は

同条3号の支配介入に当たらないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

平成元年の補完教育の対象者の選考において,本件未発令者のうち,

A労組所属者については希望者全員が対象者として選ばれたのに対し,

被上告人所属者については対象者として

選ばれたのは希望者の一部にとどまっていた。

 

しかしながら,前記2イのとおり,

参加人が昭和63年5月に定めた昇進基準においては

運転士発令が昇進として位置付けられていたものであり,

その昇進に至る過程の一つと解される補完教育の対象者の選考に当たり,

本件未発令者のうち補完教育を希望した

被上告人所属者の中で対象者に選ばれなかった者の能力や勤務成績等が,

対象者に選ばれたA労組所属者と比較して

劣るものでなかったということについては,

被上告人が一応の立証をすべきところ,

そのような事情はうかがわれない。

 

また,上記選考においても被上告人所属者3名が

補完教育の対象者として選ばれていることに加え

(上記3名は運転士発令に至る前に被上告人を脱退したというのであるが,

それが参加人からの働きかけによるものと認めるべき事情はうかがわれない。),

上記選考とほぼ同じ時期に,国鉄において

運転士を経験していた被上告人所属者23名が

参加人によって運転士に発令されてもいるところである。

 

そして,参加人は,平成2年以降は補完教育を行わずに

昇進基準に基づいて運転士発令をしているが,

この同年以降の運用の下において,同元年までの補完教育を

受けなかった本件未発令者が原則として運転士に発令されなくなったことは,

所属労働組合が被上告人である者と

他の組合である者との間で異なるものではない。

 

また,補完教育が行われた当時において,

被上告人所属者である本件未発令者のうち,

平成元年の補完教育を希望しながら対象者に選ばれなかった者については

補完教育の対象者とはしないとの参加人の判断が

示されていたものということができ,

その余の者は車掌職の経験が運転士発令に至る標準的な

昇進経路であることが周知されていた中で車掌となるための

補完教育を受けることを希望していなかったものであって,

その後,昇進基準に基づく運転士発令に加えて

これらの者を対象として改めて同様の教育の機会を特に設けるべき

需給状況の変化等の事情が生じていたともうかがわれない。

 

これらの事情によれば,平成元年の補完教育の対象者に係る

選考の結果が上記のとおりであることや,

前記2のように被上告人がストライキを含む反対闘争を行っている中で

参加人の幹部が参加人の方針に対する反対派の労働組合への

敵対的な姿勢を示す発言をしていたことなどを考慮しても,

参加人が補完教育の対象者の選考において

所属労働組合を理由として被上告人所属者を

不利益に取り扱ったものとまでいうことはできず,また,

参加人が平成2年以降は補完教育を行わなかったことが,

上記のような選考の結果や補完教育に係る希望の状況,

運転士及び車掌の需給状況等を踏まえて

同年以降は運転士発令を所定の標準的な形で行う趣旨で

採られた措置であるという以上に,

殊更に被上告人所属者を運転士の登用の経路から

排除する目的に出たものであるということもできない。

 

以上によれば,参加人が,

運転士の経験のない者に対する運転士発令につき

車掌職の経験をほぼ必要不可欠な条件とする運用の下で,

本件未発令者につき,車掌への発令のために行われた

平成元年の補完教育の対象者の選考において被上告人所属者である

希望者11名からは3名を除いて対象者に選ばず

運転士に発令しなかったこと及び

同2年以降は補完教育を行わず被上告人所属者である本件未発令者からは

1名を除いて運転士に発令しなかったことは,いずれも,

所属労働組合を理由とする労働組合法7条1号本文にいう

不利益な取扱いに当たるとはいえず,被上告人に対する

同条3号の支配介入に当たるともいえないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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