労働者が就業時間外に職場外においてビラを配布したことを理由として懲戒処分できるか
(平成4年3月3日最高裁)
事件番号 平成2(オ)156
最高裁判所の見解
労働者が就業時間外に職場外でしたビラの配布行為であっても、
ビラの内容が企業の経営政策や業務等に関し事実に反する記載をし又は
事実を誇張、わい曲して記載したものであり、
その配布によって企業の円滑な運営に支障を
来すおそれがあるなどの場合には、
使用者は、企業秩序の維持確保のために、
右ビラの配布行為を理由として労働者に
懲戒を課することが許されるものと解するのが相当である
(最高裁昭和五三年(オ)第一一四四号同五八年九月八日第一小法廷判決・
裁判集民事一三九号三九三頁参照。右と同旨の見解に立ち、
原審がその適法に確定した事実関係の下において、
上告人らは、本件ビラの配布を行ったことにおいて、
被上告会社の就業規則に定める懲戒事由の
「会社の体面をけがした者」及び「故意または重過失によって会社に
不利益を及ぼした者」に該当するものであるとした判断は、
正当として是認することができる。所論違憲の主張は、
本件ビラの配布を理由として懲戒を課することは
公序良俗に違反するとして原判決の法令違背をいうに帰するところ、
右懲戒権の行使は、上告人らの表現の自由を
不当に侵害するものとはいえず、また、
上告人らの思想、信条自体を規制しようとするものでもないから、
公序良俗に反するものではない。原判決に所論の違法はなく、
論旨は採用することができない。
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