区分所有者の有するマンション駐車場の一部の専用使用権を消滅させる集会決議が無効とされた事例

(平成10年11月20日最高裁)

事件番号  平成8(オ)1362

 

最高裁判所の見解

建物の区分所有等に関する法律(以下「法」という。)三一条一項後段の

「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に

特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の

設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって

一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、

当該区分所有関係の実態に照らして、

その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると

認められる場合をいうものと解される。

 

そして、直接に規約の設定、変更等による場合だけでなく、

規約の定めに基づき、集会決議をもって専用使用権を消滅させ、

又はこれを有償化した場合においても、

法三一条一項後段の規定を類推適用して

区分所有者間の利害の調整を図るのが相当である

(最高裁平成八年(オ)第二五八号同一〇年一〇月三〇日第二小法廷判決参照)。

 

本件においては、前記一のとおり、専用使用権に関する新規約一四条が

設定された後、その定めに基づき、集会決議をもって

被上告人の専用使用権を消滅させ、

又はこれを有償化したものであるところ、

右新規約の定め自体はいまだ被上告人に現実的、

具体的な不利益を及ぼすものではないから、

右の「特別の影響」の有無は、消滅決議及び

有償化決議について見るべきものである。

 

2 まず、消滅決議について、上告人は、

南西側駐車場の専用使用権を消滅させることは、

区分所有者全体にとって、管理用自動車、

緊急自動車の駐車場を設置し、また、

全員のための自転車置場を設置するという

高度の必要性があると主張している。

 

しかしながら、本件区分所有関係についての前記諸事情、殊に、

(1)被上告人は、分譲当初から、本件マンションの一階店舗部分において

サウナ、理髪店等を営業しており、来客用及び自家用のため、

南側駐車場及び南西側駐車場の専用使用権を取得したものであること、

(2)南西側駐車場の専用使用権が消滅させられた場合、

南側駐車場だけでは被上告人が営業活動を継続するのに

支障を生ずる可能性がないとはいえないこと、

(3)一方、被上告人以外の区分所有者は、

駐車場及び自転車置場がないことを前提として

本件マンションを購入したものであること等を考慮すると、

被上告人が南西側駐車場の専用使用権を消滅させられることにより受ける不利益は、

その受忍すべき限度を超えるものと認めるべきである。

 

したがって、消滅決議は被上告人の専用使用権に

「特別の影響」を及ぼすものであって被上告人の承諾のないままにされた

消滅決議はその効力を有しない。 消滅決議を無効とした

原審の判断は、結論において是認することができる。

 

3 次に、有償化決議については、

従来無償とされてきた専用使用権を有償化し、

専用使用権者に使用料を支払わせることは、

一般的に専用使用権者に不利益を及ぼすものであるが、

有償化の必要性及び合理性が認められ、かつ、

設定された使用料が当該区分所有関係において

社会通念上相当な額であると認められる場合には、

専用使用権者は専用使用権の有償化を受忍すべきであり、

そのような有償化決議は専用使用権者の権利に

「特別の影響」を及ぼすものではないというべきである。

 

また、設定された使用料がそのままでは

社会通念上相当な額とは認められない場合であっても、

その範囲内の一定額をもって

社会通念上相当な額と認めることができるときは、

特段の事情がない限り、その限度で、有償化決議は、

専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではなく、

専用使用権者の承諾を得ていなくとも有効なものであると解するのが相当である

(前掲平成一〇年一〇月三〇日第二小法廷判決参照)。

 

4 しかるに、原審は、被上告人が管理費等をもって

相応の経済的な負担をしてきた権利を更に有償化して

使用料を徴収することは被上告人に不利益を与えるものであるというだけで、

有償化決議により設定された使用料の額が

社会通念上相当なものか否か等について検討することなく、

有償化決議は、被上告人の承諾がない以上、

無効であると判断している。

 

したがって、原審の判断には、「特別の影響」の有無について、

法令の解釈適用の誤り、審理不尽の違法があるというべきであり、

この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

この趣旨をいう論旨は理由があり、原判決中、

上告人の敗訴部分のうち、上告人が被上告人に対し専用使用料として

平成四年一二月から毎月二五日限り一八万五〇〇〇円及び

これに対する各月二六日から各支払済みまで

年五分の割合による金員の支払を求める請求に関する部分は、

破棄を免れない。

 

5 そして、設定された使用料の額が社会通念上相当なものか否かは、

当該区分所有関係における諸事情を総合的に

考慮して判断すべきものであるところ

(前掲平成一〇年一〇月三〇日第二小法廷判決参照)、

有償化決議により設定された南側駐車場月額一〇万円、

塔屋外壁月額四万円、屋上月額一万円、

二階屋上月額二万円、非常階段踊り場月額一万五〇〇〇円という

使用料の額が社会通念上相当なものか否か、

さらには、もし右の使用料の額が相当な額と認められない場合には

幾らであれば相当といえるかについて、

所要の審理判断を尽くさせる必要がある。

 

以上の次第で、原判決中、上告人の敗訴部分のうち

本判決主文第一項掲記の部分は、破棄してこれを原審に差し戻すこととし、

上告人のその余の上告は、理由が

ないのでこれを棄却することとする。

 

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