占有回収の訴え

(平成10年3月10日最高裁)

事件番号  平成6(オ)1998

 

最高裁判所の見解

法人の代表者が法人の業務として行う物の所持は、

いわゆる機関占有であって、これによる占有は

法人そのものの直接占有というべきであり、代表者個人は、

原則として、当該物の占有者として訴えられることもなければ、

当該物の占有者であることを理由に

民法一九八条以下の占有の訴えを提起することもできないと解すべきである

(最高裁昭和二九年(オ)第九二〇号同三二年二月一五日第二小法廷判決・

民集一一巻二号二七〇頁、最高裁昭和三〇年(オ)第二四一号

同三二年二月二二日第二小法廷判決・裁判集民事二五号六〇五頁参照)。

 

しかしながら、代表者が法人の機関として物を所持するにとどまらず、

代表者個人のためにもこれを所持するものと

認めるべき特別の事情がある場合には、

これと異なり、その物について個人として

占有の訴えを提起することができるものと解するのが相当である。

 

これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、

上告人は、当初は被上告人の代表者として

本件建物等の所持を開始したのであり、被上告人から上告人が

D管長から擯斥処分を受けたことに伴い

本件建物の占有権原を喪失したとしてその明渡しを

求める別件訴訟を提起されたときにも、

右擯斥処分の効力を争うと共に、被上告人の代表者として

本件建物を占有し得る旨主張していたのであるが、

右訴訟の提起後の昭和五八年九月、上告人と被上告人は、

本件建物に関して被上告人が申し立てた

仮処分申請事件の手続中で和解をし、

上告人がIを占有補助者として本件建物を占有していることを確認し、

別件訴訟の帰すうに従って本件建物を占有すべき者を決め、

その者に占有させることに合意したのであり、事実、

右和解後も平成二年五月二日に本件建物等の占有が

被上告人に移転するまで、上告人は、

被上告人との間の別件訴訟を争いつつ、

Iを通じ、あるいは自ら直接本件建物等を

所持していたものということができるのである。

 

右によれば、上告人は、平成二年五月二日当時、

別件訴訟が決着をみるまでは上告人自身のためにも

本件建物等を所持する意思を有し、

現にこれを所持していたということができるのであって、

正に、前記特別の事情がある場合に当たると解するのが相当である。

 

そして、本件においては、Bは、平成二年五月二日、

被上告人の代表として、上告人が施錠をして管理していた

本件建物に立ち入って、右建物の鍵を付け替え、

以後警備員を配置するなどして本件建物等の管理を行い、

上告人の返還要求を拒否しているというのであるから、

上告人は、その意思に反して本件建物等の所持を奪われたものというべきであり、

本件建物等を占有している被上告人に対して、

民法二〇〇条に基づき、その返還を求めることができると解すべきである。

 

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