占有回収請求事件

(平成12年1月31日最高裁)

事件番号  平成11(受)553

 

最高裁判所の見解

法人の代表者が法人の業務として行う物の所持は、

法人の機関としてその物を占有しているものであって、

法人自体が直接占有を有するというべきであり、

代表者個人は、特別の事情がない限り、

その物の占有を有しているわけではないから、

民法一九八条以下の占有の訴えを

提起することはできないと解すべきである

(最高裁昭和二九年(オ)第九二〇号同三二年二月一五日第二小法廷判決・

民集一一巻二号二七〇頁、最高裁昭和三〇年(オ)

第二四一号同三二年二月二二日第二小法廷判決・

裁判集民事二五号六〇五頁参照)。

 

しかしながら、代表者が法人の機関として物を所持するにとどまらず、

代表者個人のためにもこれを所持するものと認めるべき

特別の事情がある場合には、これと異なり、代表者は、

その物について個人としての占有をも有することになるから、

占有の訴えを提起することができるものと解するのが相当である

(最高裁平成六年(オ)第一九九八号同一〇年三月一〇日第三小法廷判決・

裁判集民事一八七号二六九頁参照)。

 

これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、

上告人は、当初は被上告人の代表者として旧寺院の所持を開始し、

旧寺院建物から新寺院建物へ転居した後も旧寺院の管理を継続して、

これを所持していたのであり、

別件訴訟の係属中及びその終了後においても、

N、O及びPを通じ、あるいは自ら直接旧寺院を所持していたところ、

その間にI管長から擯斥処分を受けたものの、

これに承服せず新寺院への居住を続けていた。

 

そして、上告人は、被上告人から新寺院の占有権原を

喪失したとしてその明渡しを求める訴えを提起されたときにも、

右擯斥処分の効力を否定し、

上告人が被上告人の代表役員等の地位にあることの

確認を求める訴えを提起するなどして争っていただけでなく、

別件訴訟終了後にされたMとの間での

旧寺院建物の撤去についての話合いの際にも、

上告人が旧寺院を管理、所持していることを前提として、

建物撤去後の敷地の占有継続を主張するなどしていたのである。

 

右によれば、上告人は、平成九年一月一二日当時、

上告人自身のためにも旧寺院を所持する意思を有し、

現にこれを所持していたということができるのであって、

前記特別の事情がある場合に当たると解するのが相当である。

 

そして、本件においては、Mは、平成九年一月一二日、

被上告人の代表者として、上告人が管理していた旧寺院に立ち入って、

建物の錠前を付け替え、無断立入禁止の張り紙を掲示するなどして

旧寺院の管理を行い、上告人の返還請求を拒否しているというのであるから、

上告人は、その意思に反して旧寺院の占有を奪われたものというべきであり、

旧寺院を占有している被上告人に対し、民法二〇〇条に基づき、

その返還を求めることができると解すべきである。

 

四 以上によれば、本件事実関係の下で上告人の

本件占有回収の訴えを却下すべきものとした原審の判断には、

法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず、

この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

右の趣旨をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そして、前記説示に照らせば、上告人の請求を認容すべきものとした

第一審判決は正当であるから、

被上告人の控訴を棄却すべきである。

 

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