危急時遺言に当たり民法976条1項にいう遺言の趣旨の口授があったとされた事例

(平成11年9月14日最高裁)

事件番号  平成9(オ)2060

 

最高裁判所の見解

被上告人は、かねてから面識のあるI弁護士に相談の上、

担当医師らを証人として民法九七六条所定の

いわゆる危急時遺言による遺言書の作成手続を執ることにし、また、

同弁護士の助言により同弁護士の法律事務所のH弁護士を

遺言執行者とすることにし、翌日、その旨Fの承諾を得た上で、

Fの担当医師であるG医師ら三名に証人になることを依頼した。

 

3 G医師らは、同月二五日、I弁護士から、

同弁護士が被上告人から聴取した内容を基に作成した遺言書の草案の交付を受け、

Fの病室を訪ね、G医師において、Fに対し、

「遺言をなさるそうですね。」と問いかけ、

Fの「はい。」との返答を得た後、

「読み上げますから、そのとおりであるかどうか聞いて下さい。」と述べて、

右草案を一項目ずつゆっくり読み上げたところ、

Fは、G医師の読み上げた内容にその都度うなずきながら「はい。」と返答し、

遺言執行者となる弁護士の氏名が読み上げられた際には

首をかしげる仕種をしたものの、同席していた被上告人からその説明を受け、

「うん。」と答え、G医師から、「いいですか。」と問われて

「はい。」と答え、最後に、G医師から、

「これで遺言書を作りますが、いいですね。」と確認され、

「よくわかりました。よろしくお願いします。」と答えた。

 

4 G医師らは、医師室に戻り、同医師において

前記草案内容を清書して署名押印し、

他の医師二名も内容を確認してそれぞれ署名押印して、

本件遺言書を作成した。

 

右事実関係の下においては、Fは、

草案を読み上げた立会証人の一人であるG医師に対し、

口頭で草案内容と同趣旨の遺言をする意思を表明し、

遺言の趣旨を口授したものというべきであり、

本件遺言は民法九七六条一項所定の要件を満たすものということができる。

 

したがって、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、

原判決に所論の違法はない。

論旨は、独自の見解に立って原判決を非難するものにすぎず、

採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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