生命保険契約の解約返戻金請求権の差押債権者がこれを取り立てるために解約権を行使することの可否

(平成11年9月9日最高裁)

事件番号  平成10(受)456

 

最高裁判所の見解

1 金銭債権を差し押さえた債権者は、民事執行法一五五条一項により、

その債権を取り立てることができるとされているところ、

その取立権の内容として、差押債権者は、自己の名で

被差押債権の取立てに必要な範囲で債務者の一身専属的権利に

属するものを除く一切の権利を行使することができるものと解される。

 

2 生命保険契約の解約権は、身分法上の権利と性質を異にし、

その行使を保険契約者のみの意思に委ねるべき事情はないから、

一身専属的権利ではない。 また、生命保険契約の解約返戻金請求権は、

保険契約者が解約権を行使することを条件として効力を生ずる権利であって、

解約権を行使することは差し押さえた解約返戻金請求権を

現実化させるために必要不可欠な行為である。

 

したがって、差押命令を得た債権者が解約権を

行使することができないとすれば、

解約返戻金請求権の差押えを認めた

実質的意味が失われる結果となるから、

解約権の行使は解約返戻金請求権の取立てを

目的とする行為というべきである。

 

他方、生命保険契約は債務者の生活保障手段としての機能を有しており、

その解約により債務者が高度障害保険金請求権又は

入院給付金請求権等を失うなどの不利益を被ることがあるとしても、

そのゆえに民事執行法一五三条により差押命令が取り消され、

あるいは解約権の行使が権利の濫用となる場合は

格別、差押禁止財産として法定されていない生命保険契約の

解約返戻金請求権につき預貯金債権等と異なる取扱いをして

取立ての対象から除外すべき理由は認められないから、

解約権の行使が取立ての目的の範囲を超えるということはできない。

 

二 これを本件について見ると、

原審が適法に確定したところによれば、

(一)本件保険契約は、保険契約者が

いつでも保険契約を解約することができ、

その場合、保険者が保険契約者に対し、

所定の解約返戻金を支払う旨の特約付きであった、

(二) 被上告人は、本件保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえ、

保険者である上告人に対し、本件保険契約を解約する旨の意思表示をした、

というのであるから、被上告人のした

本件保険契約の解約は有効というべきである。

 

以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。

原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よって、裁判官遠藤光男の反対意見があるほか、

裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

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