取締役らの忠実義務,善管注意義務違反

(平成20年1月28日最高裁)

事件番号  平成17(受)1372

 

この裁判は、

A銀行が,B社に対して有する無担保債権につき

B社から担保を提供する条件として追加融資を求められ,

これを実行した場合において,追加融資を決定した

取締役らに忠実義務,善管注意義務違反があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば,A銀行は,

本件過振りの結果,B不動産に対して48億4000万円の

無担保債権を有することとなり,その保全を図る目的でB不動産から

本件不動産の担保提供を受けようとしたところ,

担保を提供する条件としてB不動産に対する

総額20億円の本件追加融資を求められたものであるが,

B不動産は,本件過振りによって得た

48億4000万円を株の仕手戦等に費消していて,

過振りが継続されるか別途融資を受ける以外には

これを返済する見通しがなかった上,

資金繰りが悪化して近日中に不渡りを出すことが

危ぶまれる状況にあったというのである。

 

本件追加融資は,このように健全な貸付先とは

到底認められない債務者に対する融資として

新たな貸出リスクを生じさせるものであるから,

本件過振りの事後処理に当たって債権の回収及び保全を

第一義に考えるべき被上告人らにとって,

原則として受け容れてはならない提案であったというべきである。

 

それにもかかわらず,本件追加融資に応じるとの評価額は,

地上げ途上の物件も含めてすべてを更地として評価した場合の

本件不動産の時価であって,およそ実態とかけ離れたものであり,

また,B不動産自身による評価額についても

その根拠ないし裏付けとなる事実が示された形跡はうかがわれない。

 

それにもかかわらず,被上告人らは,他に客観的な資料等を

一切検討することなく,安易に本件不動産が

本件追加融資の担保として確実な担保余力を有すると判断したものである。

 

そして,前記認定事実によれば,本件追加融資の決定から

わずか5か月後には,本件不動産の実効担保価格は

約18億円~22億円程度にすぎなかったというのであり,

この間,本件不動産について本件追加融資決定時には

通常予測できないような価格の下落があったこともうかがわれないので,

本件追加融資決定時において,本件不動産は,

本件追加融資の担保として確実な担保余力を有することが

見込まれる状態にはなかったというべきである。

 

なお,原審は,平成2年6月に実施された

A銀行の内部調査でも本件不動産に約35億円の担保価値が

認められていたというが,上記2(4)の経緯に照らせば,

これが客観的な実効担保価格を示すものでないことは明らかである。

 

そうすると,B不動産に対し本件不動産を

担保とすることを条件に本件追加融資を行うことを決定した

被上告人らの判断は,本件過振りが判明してから短期間のうちに

その対処方針及び本件追加融資に応じるか否かを

決定しなければならないという時間的制約があったことを考慮しても,

著しく不合理なものといわざるを得ず,

被上告人らには取締役としての忠実義務,

善管注意義務違反があったというべきである。

 

したがって,被上告人らは,

商法266条1項5号に基づき,

本件追加融資によってA銀行に生じた

損害を連帯して賠償すべき責任を負うところ,

前記事実関係によれば,本件追加融資により,

回収困難となっている貸付残高相当額12億6816万4671円の損害が

A銀行に生じたことが明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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