各不当労働行為救済命令取消

(平成7年2月23日最高裁)

事件番号  平成3(行ツ)91

 

 

最高裁判所の見解

労働委員会は、救済命令を発するに当たり、

その内容の決定について広い裁量権を有するものであることは

いうまでもないが、不当労働行為によって発生した侵害状態を

除去、是正し、正常な集団的労使関係秩序の迅速な

回復、確保を図るという救済命令制度の

本来の趣旨、目的に由来する限界を

逸脱することが許されないことも当然である。

 

救済命令の内容の適法性が争われる場合、裁判所は、

労働委員会の右裁量権を尊重すべきではあるが、

その行使が右是認される範囲を超え、又は著しく

不合理であって濫用にわたると認められるときには、

当該命令を違法と判断せざるを得ない

(最高裁昭和四五年(行ツ)第六〇号、

第六一号同五二年二月二三日大法廷判決・民集三一巻一号九三頁参照)。

 

本件命令部分は、チェック・オフの継続と

控除額の訴外組合の支部への交付という

不当労働行為に対する救済措置として、

上告人会社に対し、控除した組合費相当額等を

組合員個人に対してではなく、参加人両支部へ

支払うことを命じたものである。

 

しかし、右チェック・オフにより控除された

組合費相当額は本来組合員自身が

上告人会社から受け取るべき賃金の一部であり、また、

右不当労働行為による組合活動に対する制約的効果や

支配介入的効果も、組合員が賃金のうち組合費に相当する

金員の支払を受けられなかったことに伴うものであるから、

上告人会社をして、今後のチェック・オフを中止させた上、

控除した組合費相当額を参加人組合所属の

組合員に支払わせるならば、これによって、

右不当労働行為によって生じた侵害状態は除去され、

右不当労働行為がなかったと同様の

事実上の状態が回復されるものというべきである。

 

これに対し、本件命令部分のような救済命令は、

右の範囲を超えて、参加人組合と上告人会社との間に

チェック・オフ協定が締結され、参加人組合所属の

個々の組合員が上告人会社に対しその賃金から

控除した組合費相当額を参加人両支部に支払うことを

委任しているのと同様の事実上の状態を作り出してしまうこととなるが、

本件において、原審の認定事実によれば、

右協定の締結及び委任の事実は認められないのであるから、

本件命令部分により作出される右状態は、

不当労働行為がなかったのと同様の状態から

著しくかけ離れるものであることが明らかである。

 

さらに、救済命令によって作出される事実上の状態は

必ずしも私法上の法律関係と一致する必要はなく、また、

支払を命じられた金員の性質は控除された賃金

そのものではないことはいうまでもないが、

本件命令部分によって作出される右のような事実上の状態は、

私法的法律関係から著しくかけ離れるものであるのみならず、

その実質において労働基準法二四条一項の趣旨にも

抵触すると評価され得る状態であるといわなければならない。

 

したがって、本件命令部分は、労働委員会の裁量権の

合理的行使の限界を超える違法なものといわざるを得ない。

 

そうすると、原判決が本件命令部分を適法であるとしたのは、

法令の解釈適用を誤ったものであり、右違法が

原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。

 

この点をいう論旨は理由があり、原判決は右の部分につき

破棄を免れず、右部分につき、上告人会社の取消請求を

棄却した第一審判決を取り消し、

上告人会社の請求を認容すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク