名古屋市公文書公開条例9条1項1号の非公開情報

(平成17年7月15日最高裁)

事件番号  平成15(行ヒ)250

 

この裁判は、

土地開発公社が個人から買収した土地の買収価格に関する情報が

名古屋市公文書公開条例(昭和61年名古屋市条例第29号)9条1項1号にいう

個人の所得又は財産に関する情報であって

「通常他人に知られたくないと認められるもの」

に当たらないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 本件条例9条1項1号は,私事に関する情報のうち

性質上公開に親しまないような個人情報が記録されている

公文書の公開をしないことができるとしているものと解される

(最高裁平成9年(行ツ)第55号同14年2月28日第一小法廷判決・

裁判集民事205号671頁参照)。

 

前記事実関係等によれば,2の情報は,

公社が個人から取得した土地の取得価格に関する情報であり,

当該個人が識別され得るというのであるから,

個人の所得又は財産に関する情報であって,

特定の個人が識別され得るものであるということができる。

 

前記事実関係等によれば,上記取得価格は,

公有地の拡大の推進に関する法律7条の適用があるものとされ,

当該土地と地価公示法2条1項の標準地との位置,地積,環境等の

土地の客観的価値に作用する諸要因について比較して,

標準地の公示価格と当該土地の取得価格との間に

均衡を保たせるように算定されたというのであるから,

売買の当事者間の自由な交渉の結果が上記取得価格に反映することは

比較的少ないものというべきである。

 

そして,当該土地が公社に買い取られた事実については

不動産登記簿に登記されて公示される性質のものである上,

当該土地の取得価格に影響する諸要因,例えば,

駅や商店街への接近の程度,周辺の環境,前面道路の

状況,公法上の規制,当該土地の形状,地積等については,

一般に周知されている事項か,容易に調査することができる事項であるから,

これらの価格要因に基づいて公示価格を規準として算定した価格は,

一般人であればおおよその見当をつけることができる

一定の範囲内の客観的な価格であるということができる。

 

そうすると,上記取得価格をもって公社に土地を買収されたことは,

個人地権者にとって,私事としての性質が強いものではなく,

2の情報は,性質上公開に親しまないような

個人情報であるということはできないから,

本件条例9条1項1号所定の非公開情報に該当しないというべきである。

 

(2) 前記事実関係等によれば,1の情報は,

公社が土地を買収した際に個人に対して支払った

建物,工作物,立木,動産等に係る補償金の額に関する情報であり,

当該個人が識別され得るというのであるから,

個人の所得又は財産に関する情報であって,

特定の個人が識別され得るものであるということができる。

 

上記補償金の額は,一定の算定方式にのっとって

算定されるべき適正な価格であるとしても,

上記個人がどのような工作物,立木,動産等を有するかについては,

公示されるものではなく,また,

必ずしも外部に明らかになっているものではない。

 

そして,建物については,所有状況が不動産登記簿に

登記されて公示されるものの,

その価格要因のすべてが公示されるものではなく,

建物の内部の構造,使用資材,施工態様,損耗の状況等の

詳細まで外部に明らかになっているとはいえない。

 

そうすると,上記補償金の額は,一般人であれば

おおよその見当をつけることができるものではなく,

上記個人としては,通常他人に知られたくないと望むものであり,

そのことは正当であるということができる。

 

したがって,1の情報は,本件条例9条1項1号所定の

非公開情報に該当するというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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