名誉毀損に該当する事実の真実性

(平成14年1月29日最高裁)

事件番号  平成8(オ)576

 

最高裁判所の見解

民事上の不法行為たる名誉毀損については,

その行為が公共の利害に関する事実に係り,

その目的が専ら公益を図るものである場合には,

摘示された事実がその重要な部分において

真実であることの証明があれば,上記行為は違法性がなく,

また,真実であることの証明がなくても,

行為者がそれを真実と信ずるについて相当の理由があるときは,

上記行為には故意又は過失がなく,不法行為は成立しない

(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日

第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。

 

裁判所は,摘示された事実の重要な部分が真実であるかどうかについては,

事実審の口頭弁論終結時において,客観的な判断をすべきであり,

その際に名誉毀損行為の時点では存在しなかった証拠を

考慮することも当然に許されるというべきである。

 

けだし,摘示された事実が客観的な事実に合致し真実であれば,

行為者がその事実についていかなる認識を有していたとしても,

名誉毀損行為自体の違法性が否定されることになるからである。

 

真実性の立証とは,摘示された事実が

客観的な事実に合致していたことの立証であって,

これを行為当時において真実性を立証するに足りる証拠が

存在していたことの立証と解することはできないし,

また,真実性の立証のための証拠方法を行為当時に存在した

資料に限定しなければならない理由もない。

 

他方,摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由が

行為者に認められるかどうかについて判断する際には,

名誉毀損行為当時における行為者の認識内容が問題になるため,

行為時に存在した資料に基づいて検討することが必要となるが,

真実性の立証は,このような相当の理由についての判断とは

趣を異にするものである。

 

これを本件について見ると,原審は,真実性の証明は

その行為当時におけるそれであることを要するとして,

殴打事件の有罪判決が名誉毀損行為後に収集された証拠に基づいて

出されていることを理由に,同判決を本件における真実性立証のための

証拠とはなし得ないとしているのであり,

本件記事に摘示された事実の真実性を認定する際の立証の対象又は

立証のための証拠の範囲について,

判断を誤ったものであるといわなければならない。

 

以上によれば,原審の判断には,

不法行為に関する法令の解釈適用を誤った違法があり,

この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり,その余の上告理由について判断するまでもなく,

原判決は破棄を免れない。

そして,本件を原審に差し戻し,

更に審理判断させるべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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