商標法10条1項,商標法10条2項,商標法68条の40第1項,商標法施行規則22条4項,特許法施行規則30条

(平成17年7月14日最高裁)

事件番号  平成16(行ヒ)4

 

最高裁判所の見解

商標法10条1項は,「商標登録出願人は,商標登録出願が審査,

審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての

拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に限り,

2以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする

商標登録出願の一部を1又は2以上の

新たな商標登録出願とすることができる。」と規定し,

同条2項は,「前項の場合は,新たな商標登録出願は,

もとの商標登録出願の時にしたものとみなす。」と規定している。

 

また,商標法施行規則22条4項は,

特許法施行規則30条の規定を商標登録出願に準用し,

商標法10条1項の規定により

新たな商標登録出願をしようとする場合において,

もとの商標登録出願の願書を補正する必要があるときは,

その補正は,新たな商標登録出願と

同時にしなければならない旨を規定している。

 

以上のとおり,商標法10条は,「商標登録出願の分割」について,

新たな商標登録出願をすることができることや

その商標登録出願がもとの商標登録出願の時にしたものと

みなされることを規定しているが,

新たな商標登録出願がされた後におけるもとの

商標登録出願については何ら規定していないこと,

商標法施行規則22条4項は,商標法10条1項の

規定により新たな商標登録出願をしようとする場合においては,

新たな商標登録出願と同時に,もとの商標登録出願の願書を

補正しなければならない旨を規定していることからすると,

もとの商標登録出願については,その願書を補正することによって,

新たな商標登録出願がされた指定商品等が

削除される効果が生ずると解するのが相当である。

 

商標登録出願についての拒絶をすべき旨の

審決(以下「拒絶審決」という。)に対する訴えが

裁判所に係属している場合に,

商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,

もとの商標登録出願について補正がされたときには,

その補正は,商標法68条の40第1項が規定する補正ではないから,

同項によってその効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはなく,

商標法には,そのほかに補正の効果が

商標登録出願の時にさかのぼって生ずる旨の規定はない。

 

そして,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合にも,

補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずるとすると,

商標法68条の40第1項が,事件が審査,

登録異議の申立てについての審理,審判又は再審に

係属している場合以外には補正を認めず,

補正ができる時期を制限している趣旨に反することになる

(最高裁昭和56年(行ツ)第99号同59年10月23日

第三小法廷判決・民集38巻10号1145頁参照)。

 

拒絶審決を受けた商標登録出願人は,審決において

拒絶理由があるとされた指定商品等以外の指定商品等について,

商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願をすれば,

その商標登録出願は,もとの

商標登録出願の時にしたものとみなされることになり,

出願した指定商品等の一部について拒絶理由があるために

全体が拒絶されるという不利益を免れることができる。

 

したがって,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,

商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,

もとの商標登録出願について願書から

指定商品等を削除する補正がされたときに,

その補正の効果が商標登録出願の時に

さかのぼって生ずることを認めなくとも,

商標登録出願人の利益が害されることはなく,

商標法10条の規定の趣旨に反することはない。

 

以上によれば,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,

商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,

もとの商標登録出願について願書から指定商品等を

削除する補正がされたときには,その補正の効果が

商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはなく,

審決が結果的に指定商品等に関する判断を

誤ったことにはならないものというべきである。

 

これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが

明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。

 

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