商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠く新株発行につき著しく不公正な方法によるものではないとはいえず無効原因があるとされた事例

(平成10年7月17日最高裁)

事件番号  平成8(オ)280

 

最高裁判所の見解

 

新株発行に関する事項の公示

(商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知)は、

株主が新株発行差止請求権(同法二八〇条ノ一〇)を

行使する機会を保障することを目的として会社に

義務付けられたものであるから、

新株発行に関する事項の公示を欠くことは、

新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが

許容されないと認められる場合でない限り、

新株発行の無効原因となると解すべきである

(最高裁平成五年(オ)第三一七号同九年一月二八日第三小法廷判決・

民集五一巻一号七一頁参照)。

 

これを本件についてみるに、前記事実関係に照らせば、

(一)Dは、本件新株発行についてFに他言しないように頼み、

当時発行済株式の総数の過半数を所有していた

上告人らに通知しないまま本件新株発行を行っているが、

これは上告人らに秘匿して行ったものといわざるを得ないこと、

(二)本件新株発行により、

上告人らの持株は過半数を割り込むことになり、

他方、Dの持株は過半数を上回ることになって、

被上告人に対する支配関係が逆転すること、

(三)本件新株発行が取締役会で決議されたのは、

商法の一部を改正する法律(平成二年法律第六四号)の施行日である

平成三年四月一日の直前の同年三月二九日であって、

もし右施行日後に右決議がされていれば、

株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定款の定めのある

被上告人の株主である上告人らは新株引受権を

有することになったはずであること

(同法附則一四条、商法二八〇条ノ五ノ二)、

(四)新株の払込期日は右決議の約二箇月も先である

同年五月二三日と定められており、新株発行により増資されても、

それが直ちに株式会社の運転資金を調達したことにはならず、

被上告人が本件新株発行を決議した当時、

その公示をしないで本件新株発行を急がねばならないほど

資金を緊急に調達する必要があったとは

いい難いこと等の事情が存することが

明らかである 右によれば、本件新株発行は

「著シク不公正ナル方法」(同法二八〇条ノ一〇)によるものではないとは

到底いえず、差止めの事由がないとは認められないから、

前記の通知又は公告を欠く本件新株発行には、

無効原因があるというべきである。

 

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