図利加害の意欲ないし積極的認容と特別背任罪における図利加害目的
(昭和63年11月21日最高裁)
事件番号 昭和60(あ)714
最高裁判所の見解
原判決及び原判決が是認する差戻し後の第一審判決の認定によれば、
株式会社C銀行のD支店長であつた被告人Bは、
被告人Aの経営するE株式会社(以下「E」という。)が
同支店に開設していた当座預金口座に決済資金が不足した場合には、
右不足分を同銀行において立替払いをする
いわゆる過振りの便宜を図つていたが、Eの資金
状態が改善される見通しのないことが明らかとなつた後も、
その任務に違背し、被告人A及びEを利し
同銀行を害することを熟知しながら、
あえて回収不能のおそれのある過振りを長期間連続的に行い、
同銀行に財産上の損害を加えたものであり、しかも、
被告人Bが右任務違背行為に出たのは、同銀行の利益を図るためではなく、
従前安易に行つていた過振りの実態が本店に発覚して自己の面目信用が
失墜するのを防止するためであつたというのである。
ところで、特別背任罪における図利加害目的を肯定するためには、
図利加害の点につき、必ずしも所論がいう意欲ないし
積極的認容までは要しないものと解するのが相当であり、
右事実関係のもとにおいては、被告人A及びEを利し
同銀行を害する図利加害目的の存在を
認めることができるものというべきであるから、
これと同旨に解される原判断は、正当である。
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