国の公庫に対する払渡金返還請求

( 平成6年2月8日最高裁)

事件番号  昭和62(オ)253

 

最高裁判所の見解

上告人は、政府がその資本金の全額を出資する公法人であり、

大蔵大臣の認可、監督、計画、指示の下に、

一般の金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、

必要な事業資金等の供給を目的とするものであって、

政府の行政目的の一端を担うものであることは

原判決指摘のとおりであり、それゆえ、

上告人が被上告人に対し経済的な利益を主張するにも

一般の私人とは立場を異にする面があることは否定できない。

 

しかしながら、反面、上告人は、政府から独立した法人として、

自立的に経済活動を営むものである上、

恩給担保貸付けを行うことができる者を

上告人及び別に法律をもって定める金融機関

(現在は沖縄振興開発金融公庫のみがこれに当たる。)に

限定した恩給法の趣旨にかんがみると、上告人は、

恩給受給者に対しては一定の要件の下に

恩給担保貸付けをすることが義務付けられているというべきであるから、

上告人が前記のような公法人であるというだけで、

被上告人に対し、自らの経済的利益を前提とする

前記のような主張をすることが許されなくなるものではない。

 

このことは、被上告人が上告人に対してこれまで一貫して

過誤払金の返還請求をしてきたとしても同様である。

 

そして、上告人は、右にみたように恩給受給者に対しては

恩給を担保に貸付けをすることが法によって

義務付けられているものであるところ、

恩給裁定の有効性については上告人自らは審査することができず、

これを有効なものと信頼して扱わざるを得ないものであるから、

被上告人がDに対して不当利得の返還を請求することは当然として、

本件裁定取消しの効果を右のような利害関係に立つに至った

上告人に及ぼすことは、被上告人のした恩給裁定の

有効性を信頼して義務的に恩給担保貸付けを実行し、かつ、

弁済された旨の処理をしている上告人に対して

著しい不利益を与えるものであり、被上告人が

本件裁定取消しの効果を上告人との関係で

実現できないことによる不都合も上告人に右のような

不利益を甘受させなければならないほどに重大であるとはいえない上、

本件で恩給裁定が取り消されたのは、前記一にみるとおり、

上告人への最初の払渡しが行われてから一二年八か月後、

最終の払渡しが行われてからでも七年二か月後であって、

被上告人からの払渡しをもって恩給担保貸付金が

弁済された旨の処理をする上告人の立場からすると上告人においては、

もはや弁済の効果が覆されることはないと考えても

無理からぬ期間が経過した後であるといわなければならない

(記録によれば、上告人の貸付関係の書類の保管期間は

完済後五年間であり、そのため、上告人は、

本件払渡しをもってDに対する貸付けは完済されたものとして

関係書類を廃棄しており、現在では貸付けの内容及び

連帯保証人等が不明となっていることがうかがわれる。)。

 

したがって、このような事情の下において、

被上告人が上告人に対して、本件裁定取消しの効果を主張し、

本件払渡しに係る金員の返還を求めることは、

許されないものと解するのが相当である。

 

この趣旨をいう上告人の前記主張は理由がある。

 

四 右と異なる判断の下に、上告人の前記主張を排斥し、

被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断には、

法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、

右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。

 

論旨は理由があり、その余の上告理由について判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。そして、前記説示に徴すれば、

被上告人の上告人に対する請求は結局理由がないことに帰するから、

原判決を破棄し、第一審判決を取り消して、

被上告人の請求を棄却することとする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク