国家賠償法1条1項

(平成23年7月12日最高裁)

事件番号  平成22(受)9

 

この裁判は、

市立小学校又は中学校の教諭らが勤務時間外に

職務に関連する事務等に従事していた場合において,

その上司である各校長に上記教諭らの心身の健康を損なうことがないよう

注意すべき義務に違反した過失があるとはいえないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

事実関係によれば,被上告人らは,本件期間中,

いずれも勤務時間外にその職務に関連する事務等に

従事していたというのであるが,上記(1)のとおり,

これは時間外勤務命令に基づくものではなく,

被上告人らは強制によらずに各自が職務の性質や

状況に応じて自主的に上記事務等に従事していたものというべきであるし,

その中には自宅を含め勤務校以外の場所で行っていたものも少なくない。

 

他方,原審は,被上告人らは上記事務等により

強度のストレスによる精神的苦痛を被ったことが

推認されるというけれども,本件期間中又はその後において,

外部から認識し得る具体的な健康被害又は

その徴候が被上告人らに生じていたとの事実は認定されておらず,

記録上もうかがうことができない。

 

したがって,仮に原審のいう強度のストレスが健康状態の

悪化につながり得るものであったとしても,

勤務校の各校長が被上告人らについてそのような

ストレスによる健康状態の変化を認識し又は予見することは

困難な状況にあったというほかない。

 

これらの事情に鑑みると,本件期間中,

被上告人らの勤務校の上司である各校長において,

被上告人らの職務の負担を軽減させるための

特段の措置を採らなかったとしても,

被上告人らの心身の健康を損なうことがないよう

注意すべき上記の義務に違反した過失があるということはできない

 

(3) 以上によれば,本件期間中,被上告人らの

勤務校における上司である各校長の職務上の行為に,

被上告人らとの関係において国家賠償法上の違法及び

過失があるとは認められず,

上告人は,被上告人らに対し,

同法1条1項に基づく賠償責任を負わないというべきである。

 

6 上記と異なる見解の下に,国家賠償法1条1項に基づく

上告人の賠償責任を肯定し,前記の限度で被上告人らの

請求を認容すべきものとした原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,

原判決のうち上告人の敗訴部分は破棄を免れない。

 

そして,以上に説示したところによれば,

上記部分に関する被上告人らの請求はいずれも理由がない。

 

そうすると,上記部分のうち,被上告人X1及び同X2の請求に

関する部分については,請求を棄却した第1審判決は正当であるから,

同被上告人らの控訴を棄却すべきであり,また,

被上告人X3の請求に関する部分については,

第1審判決のうちこれを認容した部分を取り消し,

同部分に係る同被上告人の請求を棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク