国民年金法,厚生年金保険法

(平成11年10月22日最高裁)

事件番号  平成9(オ)434

 

最高裁判所の見解

(一) 国民年金法に基づく障害基礎年金も厚生年金保険法に基づく

障害厚生年金も、原則として、保険料を納付している

被保険者が所定の障害等級に該当する障害の状態になったときに

支給されるものであって(国民年金法三〇条以下、八七条以下、

厚生年金保険法四七条以下、八一条以下参照)、

程度の差はあるものの、いずれも保険料が拠出されたことに基づく

給付としての性格を有している。

 

したがって、障害年金を受給していた者が

不法行為により死亡した場合には、

その相続人は、加害者に対し、障害年金の受給権者が生存していれば

受給することができたと認められる障害年金の現在額を同人の損害として、

その賠償を求めることができるものと解するのが相当である。

 

そして、亡Iが本件事故により死亡しなければ平均余命まで

障害年金を受給することのできたがい然性が高いものとして、

この間に亡Iが得べかりし障害年金相当額を

逸失利益と認めた原審の認定判断は、

原判決挙示の証拠関係に照らして是認するに足りる。

 

(二) もっとも、子及び妻の加給分については、

これを亡Iの受給していた基本となる

障害年金と同列に論ずることはできない。

 

すなわち、国民年金法三三条の二に基づく子の加給分及び

厚生年金保険法五〇条の二に基づく配偶者の加給分は、

いずれも受給権者によって生計を維持している者がある場合に

その生活保障のために基本となる障害年金に加算されるものであって、

受給権者と一定の関係がある者の存否により

支給の有無が決まるという意味において、

拠出された保険料とのけん連関係があるものとはいえず、

社会保障的性格の強い給付である。加えて、右各加給分については、

国民年金法及び厚生年金保険法の規定上、子の婚姻、養子縁組、配偶者の離婚など、

本人の意思により決定し得る事由により加算の終了することが予定されていて、

基本となる障害年金自体と同じ程度に

その存続が確実なものということもできない。

 

これらの点にかんがみると、右各加給分については、

年金としての逸失利益性を認めるのは相当でないというべきである。

 

この点に関する原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法がある。

 

5 そして、本件事故当時における亡Iの逸失利益の現価は、

本件事故がなければ亡Iに支給された

がい然性の認められる障害年金の年額一八九万八四〇〇円

(亡Iの前記障害年金受給額から子及び妻の加給分を控除した金額)から

亡Iの生活費及び介助費用相当額を控除した年額二三万三八八〇円に、

新ホフマン係数一八・四二一四を乗じた

四三〇万八三九七円(円未満切捨て。以下同じ。)となる。

 

6 一審原告B2及び同B3は、

それぞれ亡Iの右逸失利益及び慰謝料一〇〇〇万円についての

損害賠償請求権を法定相続分各四分の一の割合に従って取得したものであり、

これに原審の認定したその余の損害各三〇〇万円を加えると、

一審原告B2及び同B3の本件請求は、各六五七万七〇九九円及び

これに対する不法行為の日である平成四年七月一六日から

各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の

支払を求める限度で、それぞれ理由があるからこれを認容し、

その余は失当として棄却すべきものである。

 

したがって、前記加給分の逸失利益性に関する原審の判断の違法は

原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであり、

論旨はこの限度で理由がある。

 

四 さらに、職権をもって一審原告B1の損害額について判断する。

 

国民年金法及び厚生年金保険法に基づく障害年金の

受給権者が不法行為により死亡した場合において、

その相続人のうちに、障害年金の受給権者の死亡を原因として

遺族年金の受給権を取得した者があるときは、

遺族年金の支給を受けるべき者につき、

支給を受けることが確定した遺族年金の額の限度で、

その者が加害者に対して賠償を求め得る損害額から

これを控除すべきものと解するのが相当である

(最高裁昭和六三年(オ)第一七四九号平成五年三月二四日大法廷判決・

民集四七巻四号三〇三九頁参照)。

 

そして、この場合において、右のように遺族年金をもって

損益相殺的な調整を図ることのできる損害は、

財産的損害のうちの逸失利益に限られるものであって、

支給を受けることが確定した遺族年金の額がこれを上回る場合であっても、

当該超過分を他の財産的損害や精神的損害との関係で

控除することはできないというべきである。

 

2 これを本件について見ると、前記三1のとおり、

一審原告B1は、亡Iが本件事故により死亡したため、

国民年金法に基づく遺族基礎年金及び厚生年金保険法に基づく

遺族厚生年金を受給しており、

支給を受けることが確定した遺族年金の額は、

七一四万一七一三円である。他方、一審原告B1は、

亡Iの前記逸失利益及び慰謝料についての

損害賠償請求権を法定相続分二分の一の割合に従って取得したものであり、

これに原審の認定したその余の損害九一四万円を加えると、

その損害額は合計一六二九万四一九八円となる。

 

これから右相続に係る逸失利益分二一五万四一九八円の限度で

右遺族年金を控除すると、一審原告B1の本件請求は、

一四一四万円及びこれに対する不法行為の日である

平成四年七月一六日から支払済みまで民法所定の

年五分の割合による遅延損害金の

支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、

その余は失当として棄却すべきものである。

 

原審は、右遺族年金をもって相続に係る逸失利益分以外の

一審原告B1の損害からも控除しているところ、

この点に関する原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、

この違法もまた原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク