国民年金法30条の4所定のいわゆる初診日要件

(平成20年10月10日最高裁)

事件番号  平成19(行ヒ)68

 

この裁判では、

統合失調症を発症し医師の診療を必要とする状態に至った時点において

20歳未満であったことが事後的診断等により

医学的に確認できた者と国民年金法30条の4所定の

いわゆる初診日要件について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 国民年金法30条1項は,

いわゆる拠出制の障害基礎年金の支給要件として,

障害の原因となった疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について

初めて医師又は歯科医師(以下「医師等」という。)の

診療を受けた日において被保険者であることなどを定めている。

 

そして,同項は,疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について

初めて医師等の診療を受けた日をもって「初診日」という旨規定しており,

20歳前障害基礎年金の支給要件を定めた同法30条の4にいう

「その初診日において20歳未満であった者」とは,

その疾病又は負傷及びこれらに起因する疾病について

初めて医師等の診療を受けた日において

20歳未満であった者をいうものであることは,

その文理上明らかである。

 

上記のとおり,国民年金法は,発症日ではなく

初診日を基準として障害基礎年金の支給要件を定めているのであるが,

これは,国民年金事業を管掌する政府において

個々の傷病につき発症日を的確に

認定するに足りる資料を有しないことにかんがみ,

医学的見地から裁定機関の認定判断の客観性を担保するとともに,

その認定判断が画一的かつ公平なものとなるよう,

当該傷病につき医師等の診療を受けた日をもって

障害基礎年金の支給に係る規定の適用範囲を

画することとしたものであると解される。

 

原審は,統合失調症について,

発症から医師の診療を受けるに至るまでの期間が

長期化しがちであるという特質があることなどを理由として,

統合失調症を発症し医師の診療を必要とする状態に至った時点において

20歳未満であったことが,医師の事後的診断等により

医学的に確認できた者については,

初診日要件を満たすものと解するのが相当であるとするのであるが,

このような解釈は,前記各条項の文理に反するものであり,

また,国民年金法が画一的かつ公平な判断のために当該傷病につき

医師等の診療を受けた日をもって障害基礎年金の

支給に係る規定の適用範囲を

画することとした前記の立法趣旨に照らしても,

採用することができない。

 

(2) 前記事実関係によれば,被上告人は,

20歳に達した後の昭和56年5月27日に診断を受けるまで,

統合失調症に起因する症状について

医師の診療を受けたことはなかったというのであるから,

当該疾病につき初診日要件を満たしているものということはできない。

 

なお,昭和60年法律第34号による国民年金法の改正に際し,

同改正前の国民年金法による

障害福祉年金の受給権を有していた者については,

所定の条件の下で20歳前障害基礎年金を

支給することとされたが(昭和60年法律第34号附則25条),

障害福祉年金について定めた

同改正前の国民年金法57条1項においても,

20歳前障害基礎年金の場合と同様に,

「その初診日において20歳未満であった者」

であることなどがその支給要件とされており,

被上告人はこれを満たしていたものということもできない。

 

そうすると,被上告人は,

20歳前障害基礎年金の受給権を有するものではなく,

また,前記の初診日において

国民年金の被保険者ではなかったため拠出制の

障害基礎年金の支給要件も満たしていないから,

被上告人に対し障害基礎年金を支給しないこととした

本件処分に違法はないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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