国税通則法65条4項にいう「正当な理由」

(平成19年7月6日最高裁)

事件番号  平成18(行ヒ)295

 

この裁判は、

納税者が平成12年分の所得税の確定申告において

勤務先の日本法人の親会社である外国法人から

付与されたストックオプションの権利行使益を

一時所得として申告したことにつき,

国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,

原則としてその違反者に対して課されるものであり,

これによって,当初から適正に申告し納税した納税者との間の

客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,

過少申告による納税義務違反の発生を防止し,

適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする

行政上の措置である。

 

この趣旨に照らせば,過少申告があっても

例外的に過少申告加算税が課されない場合として

国税通則法65条4項が定めた「正当な理由があると認められる」場合とは,

真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,

上記のような過少申告加算税の趣旨に照らしても

なお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は

酷になる場合をいうものと解するのが相当である

(最高裁平成17年(行ヒ)第9号同18年4月20日

第一小法廷判決・民集60巻4号1611頁,

最高裁平成16年(行ヒ)第86号,第87号同18年4月25日第三小法廷判決・

民集60巻4号1728頁参照)。

 

前記事実関係等によれば,課税庁は,

外国法人である親会社から日本法人である子会社の

従業員等に付与されたストックオプションに係る

課税上の所得区分に関して,かつてはこれを

一時所得として取り扱っており,課税庁の職員が監修等をした公刊物でも

その旨の見解が述べられていたが,

平成10年分の所得税の確定申告の時期以降,

その取扱いを変更し,給与所得として統一的に取り扱うようになったものである。

 

この所得区分に関する所得税法の解釈問題については,

一時所得とする見解にも相応の論拠があり,

最高裁平成16年(行ヒ)第141号同17年1月25日

第三小法廷判決・民集59巻1号64頁によって

これを給与所得とする当審の判断が示されるまでは,

下級審の裁判例においてその判断が分かれていたのである。

 

このような問題について,課税庁が従来の取扱いを変更しようとする場合には,

法令の改正によることが望ましく,仮に法令の改正によらないとしても,

通達を発するなどして変更後の取扱いを納税者に周知させ,

これが定着するよう必要な措置を講ずべきものである。

 

ところが,前記事実関係等によれば,課税庁は,

上記のとおり課税上の取扱いを変更したにもかかわらず,

その変更をした時点では通達によりこれを明示することなく,

平成14年6月の所得税基本通達の改正によって

初めて変更後の取扱いを通達に明記したというのである。

 

そうすると,少なくともそれまでの間は,納税者において,

外国法人である親会社から日本法人である子会社の従業員等に付与された

ストックオプションの権利行使益が一時所得に当たるものと解し,

その見解に従って上記権利行使益を一時所得として申告したとしても,

それをもって納税者の主観的な事情に基づく

単なる法律解釈の誤りにすぎないものということはできない。

 

以上のような事情の下においては,本件申告において,

上告人が本件権利行使益を一時所得として申告し,

本件権利行使益が給与所得に当たるものとしては

税額の計算の基礎とされていなかったことについて,

真に上告人の責めに帰することのできない客観的な事情があり,

過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお上告人に

過少申告加算税を賦課することは不当又は

酷になるというのが相当であるから,

国税通則法65条4項にいう

「正当な理由」があるものというべきである。

 

そうすると,本件賦課決定のうち本件係争部分は違法であることになるから,

これが適法であるとした原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,

原判決のうち同部分の取消請求に関する部分は破棄を免れない。

 

そして,同部分につき本件賦課決定の取消請求を

認容した第1審判決は正当であるから,

同部分につき被上告人の控訴を棄却すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク