国税通則法65条4項

(平成16年7月20日最高裁)

事件番号  平成11(行ヒ)169

 

最高裁判所の見解

本件規定は,同族会社において,これを支配する株主又は

社員の所得税の負担を不当に減少させるような行為又は

計算が行われやすいことにかんがみ,税負担の公平を維持するため,

株主又は社員の所得税の負担を不当に減少させる結果となると

認められる行為又は計算が行われた場合に,

これを正常な行為又は計算に引き直して当該株主又は

社員に係る所得税の更正又は決定を行う権限を税務署長に認めたものである。

 

このような規定の趣旨,内容からすれば,

株主又は社員から同族会社に対する金銭の無利息貸付けに

本件規定の適用があるかどうかについては,

当該貸付けの目的,金額,期間等の融資条件,無利息としたことの

理由等を踏まえた個別,具体的な事案に即した検討を

要するものというべきである。そして,

前記事実関係等によれば,本件貸付けは,

3455億円を超える多額の金員を無利息,無期限,無担保で

貸し付けるものであり,被上告人がその経営責任を果たすために

これを実行したなどの事情も認め難いのであるから,

不合理,不自然な経済的活動であるというほかはないのであって,

税務に携わる者としては,本件規定の適用の有無については,

上記の見地を踏まえた十分な検討をすべきであったといわなければならない。

 

他方,本件各解説書は,その体裁等からすれば,

税務に携わる者においてその記述に税務当局の見解が

反映されていると受け取られても仕方がない面がある。

 

しかしながら,その内容は,代表者個人から

会社に対する運転資金の無利息貸付け一般について

別段の定めのあるものを除きという留保を付した上で,

又は業績悪化のため資金繰りに窮した会社のために

代表者個人が運転資金500万円を無利息で貸し付けたという設例について,

いずれも,代表者個人に所得税法36条1項にいう

収入すべき金額がない旨を解説するものであって,

代表者の経営責任の観点から当該無利息貸付けに

社会的,経済的に相当な理由があることを

前提とする記述であるということができるから,

不合理,不自然な経済的活動として本件規定の適用が

肯定される本件貸付けとは事案を異にするというべきである。

 

そして,当時の裁判例等に照らせば,

被上告人の顧問税理士等の税務担当者においても,

本件貸付けに本件規定が適用される可能性が

あることを疑ってしかるべきであったということができる。

 

そうすると,前記利息相当分が

更正前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて

国税通則法65条4項にいう

正当な理由があったとは認めることができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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