地位確認請求事件

(平成11年11月9日最高裁)

事件番号  平成9(オ)96

 

最高裁判所の見解

本件のようなクラブに入会した

いわゆる個人正会員又はその家族会員は、

特段の事情のない限り、入会契約に基づき、

クラブ内のすべての施設を原則として

全日利用することができる権利を有するものであって、

その利用権の対象となる施設は、入会契約において

定められるのが通常であるが、契約書等に明記されていない場合は、

原則として、当時既に設置されていた施設のほか、

いまだ設置されていないが将来設置が予定され、

完成後に会員の無条件での利用に供することが暗黙のうちに

了解されていた施設も含まれ、また、

一見新たに設置された施設と思われるものであっても

既存の施設を改造するなどして造られたものと評価できるものも、

これに含まれると解するのが相当である。

 

そして、このようにして当初成立した被上告人と会員との間の

施設利用に関する権利義務関係は、後に、

一方的にその内容を変更することはできないものであって、

被上告人が、本件クラブにおける

これらの施設の利用について会員に対して

一方的にその権利を制限することができないことは、

原審の前記いう点で変わるところがない。

 

その上、被上告人は、旧ゴルフコースを閉鎖して

これに代わるものとしてその跡地等にこれを建設したもので、

本件クラブにおいては唯一のゴルフコースであるから、

旧ゴルフコースより質的に向上した施設であるからといって、

直ちに、既存の施設とは別個独立の施設を

増設したものといえるかは問題である。

 

確かに、被上告人は新ゴルフコースの建設のために

高額の建設費を要してはいるが、だからといって、

当然には、これらの費用を従前の会員が負担し又は

援助すべき理由はないから、被上告人が、

右の高額の建設費の支出を理由として、一方的に、

会員の施設利用権の内容を変更することができるものとはいえない。

 

事実、本件記録によれば、被上告人は、

新ゴルフコースの建設計画の当初においては、

将来入会する新会員の預託金から新設コースの資金を調達し、

旧会員から追加預託金を徴収しない旨の通知を

発していたことがうかがえるのであって、会員の同意がないのに、

追加預託金を支払わないことを理由に

新ゴルフコースの利用を当然に制限できるとはいい難い。

 

加えて、被上告人が入会契約に当たりその利用に供することを約定していた

ゴルフコースの特色としては何が明示されていたのか、

さらには、上告人らの入会当時、被上告人としては

将来どのようにこれを改造しようと考え、

それを新入会員らに公表していたのか、そうした事情について、

原判決には十分な判示を見いだし難いが、

それらの事情いかんによっては、新ゴルフコースも

入会契約の対象に含まれていたと解する余地がないとはいえない。

 

事実、原審の認定した前記事実によれば、

被上告人は、旧ゴルフコースを設置した当初から

将来的にはより敷地面積の広いゴルフコースを

設置する計画を有していたというのであり、また、

本件記録によれば、被上告人が右計画を早くから公表し、

本件クラブ内には旧ゴルフコース以上のゴルフコースが

設置されることになっているかのように

宣伝していたことがうかがわれるのである。

 

それらの事情からすれば、被上告人が設置することを

公表していた新設ゴルフコースの利用について、

被上告人と会員との間でいかなる

合意ができていたのかについても

検討を要するものといわなければならない。

 

したがって、これらの事情について判断することなく、

新ゴルフコースが旧ゴルフコースと質的に異なるというだけで

その利用権を否定した原判決には、契約に関する法令解釈を誤り、

その結果、審理を尽くさなかった違法があり、

右の違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり、原判決は、破棄を免れない。

そこで、被上告人と上告人らとの入会契約に基づく

施設利用権の具体的内容について、

更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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