地方自治法

(平成18年12月1日最高裁)

事件番号  平成15(行ヒ)74

 

最高裁判所の見解

資金前渡職員のする普通地方公共団体に債務を負担させる行為

(以下「個別債務負担行為」という。)及び支払は,

前記の支出負担行為,支出命令及び支出(狭義の支出)と並んで,

法242条1項にいう「公金の支出」に当たり,

住民訴訟の対象となるものと解するのが相当である。

 

(2) 旧法242条の2第1項4号にいう「当該職員」とは,

当該訴訟においてその適否が問題とされている

財務会計上の行為を行う権限を

法令上本来的に有するとされている者及び

これらの者から権限の委任を受けるなどして

上記権限を有するに至った者を広く意味するものである

(最高裁昭和55年(行ツ)第157号同62年4月10日

第二小法廷判決・民集41巻3号239頁参照)。

 

資金前渡職員が交付を受けた

金額の範囲内で個別債務負担行為をし,また,

債務を履行するため債権者に対する支払をすることができるのは,

特定の経費につき資金前渡を受けて支出負担行為及び

支出(狭義の支出)に係る権限を普通地方公共団体の長から

委任されたことによるところであるから,

資金前渡職員は,個別債務負担行為及び支払の適否が問題とされている

住民訴訟において,旧法242条の2第1項4号にいう

「当該職員」に該当するものと解すべきである。

 

また,普通地方公共団体の長は,支出負担行為をする

権限を法令上本来的に有するとされている以上,

資金前渡をした場合であっても,資金前渡職員のする

個別債務負担行為の適否が問題とされている住民訴訟において,

同号所定の「当該職員」に該当するものと解すべきである

(最高裁昭和62年(行ツ)第148号平成5年2月16日

第三小法廷判決・民集47巻3号1687頁参照)。

 

(3) そして,資金前渡職員が個別債務負担行為をした場合においては,

普通地方公共団体の長は,当該資金前渡職員が

財務会計上の違法行為をすることを

阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,

故意又は過失により同資金前渡職員が財務会計上の

違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,

自らも財務会計上の違法行為を行ったものとして,

普通地方公共団体に対し,上記違法行為により

当該普通地方公共団体が被った損害につき

賠償責任を負うものと解するのが相当である

(前掲平成5年2月16日第三小法廷判決,

最高裁平成4年(行ツ)第156号同9年4月2日大法廷判決・

民集51巻4号1673頁参照)。

 

(4) 以上を本件についてみると,本件各支払及びその前提としてされた

本件各債務負担行為は,いずれも,第1審被告Y が

市長等交際費の資金前渡職員としてした債権者に対する支払及び

その前提となる個別債務負担行為であるというのであるから,

法242条1項にいう「公金の支出」に当たり,

住民訴訟の対象となるものであり,

これらをする権限を有する資金前渡職員である

第1審被告Y は「当該職員」に当たることとなる。

 

そして,第1審被告Y も,

本件各債務負担行為につき「当該職員」に当たり,

第1審被告Y が本件各債務負担行為につき財務会計上の

違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,

故意又は過失によりこれを阻止しなかったときに限り,

市に対し,上記違法行為により市が

被った損害につき賠償責任を負うこととなる。

 

5 第1審被告らの論旨は

上記3(1)の原審の判断の法令違反及び判例違反を,

第1審原告の論旨は同(2)の原審の判断の

法令違反をそれぞれいうものである。

 

普通地方公共団体も社会的実体を有するものとして

活動している以上,当該普通地方公共団体の事務を遂行し

対外的折衝等を行う過程において,長又はその他の執行機関が

各種団体等の主催する会合に列席するとともに

その際に祝金を主催者に交付するなどの交際をすることは,

社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り,

上記事務に随伴するものとして許容されるというべきである

(最高裁昭和38年(オ)第49号同39年7月14日第三小法廷判決・

民集18巻6号1133頁,最高裁昭和61年(行ツ)第144号

平成元年9月5日第三小法廷判決・裁判集民事157号419頁,

最高裁平成14年(行ヒ)第46号同15年3月27日第一小法廷判決・

裁判集民事209号335頁参照)。

 

そして,普通地方公共団体が住民の福祉の増進を図ることを

基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を

広く担うものとされていること(法1条の2第1項)などを考慮すると,

その交際が特定の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において

具体的な目的をもってされるものではなく,

一般的な友好,信頼関係の維持増進自体を

目的としてされるものであったからといって,

直ちに許されないこととなるものではなく,

それが,普通地方公共団体の上記の役割を

果たすため相手方との友好,信頼関係の維持増進を

図ることを目的とすると客観的にみることができ,かつ,

社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り,

当該普通地方公共団体の事務に含まれるものとして

許容されると解するのが相当である。

 

しかしながら,長又はその他の執行機関のする交際は,

それが公的存在である普通地方公共団体により

行われるものであることにかんがみると,それが,

上記のことを目的とすると客観的にみることができず,

又は社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には,

当該普通地方公共団体の事務に含まれるとはいえず,

その費用を支出することは許されないものというべきである

(前掲平成元年9月5日第三小法廷判決参照)。

 

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