地方自治法242条2項

(平成14年9月17日最高裁)

事件番号  平成13(行ツ)38

 

最高裁判所の見解

(1) 法242条2項本文は,

普通地方公共団体の執行機関,職員の

財務会計上の行為は,たとえそれが違法,不当なものであったとしても,

いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象と

なり得るものとしておくことが法的安定性を損ない好ましくないとして,

監査請求の期間を定めている。

 

しかし,当該行為が普通地方公共団体の住民に隠れて秘密裡にされ,

1年を経過してから初めて明らかになった場合等にも

その趣旨を貫くのは相当でないことから,同項ただし書は,

「正当な理由」があるときは,例外として,

当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後であっても,

普通地方公共団体の住民が監査請求を

することができるようにしているのである。

 

したがって,上記のように当該行為が秘密裡にされた場合には,

同項ただし書にいう正当な理由の有無は,

特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって

調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また,

当該行為を知ることができたと解される時から

相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである

(最高裁昭和62年(行ツ)第76号同63年4月22日

第二小法廷判決・裁判集民事154号57頁参照)。

 

そして,当該行為が秘密裡にされた場合に限らず,

普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって

調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に

当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,

上記の趣旨を貫くのは相当でないというべきである。

 

したがって,そのような場合には,上記正当な理由の有無は,

特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって

調査すれば客観的にみて上記の程度に

当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から

相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである。

 

(2) 本件監査請求は,本件各土地の売買価格が

不当に高額であるとしてされたものであるところ,

前記事実関係等によれば,本件各契約に関しては,

a山公園整備事業都市計画案の縦覧並びに

本件各土地につき市への所有権移転登記及び仙台市土地台帳への登録が

前記各日にそれぞれされており,平成2年度及び同3年度の各予算説明書及び

決算説明書にa山公園用地取得のための事業費に関する記載があるというのである。

 

そして,上記各決算説明書の記載によれば,

a山公園用地の各年度の売買価格の平均値が

1㎡当たり約17万円であったことが明らかとなっていたというべきである。

 

そうすると,上記各決算説明書が一般の閲覧に供されて

市の住民がその内容を了知することができるようになったころには,

市の住民が上記各書類を相当の注意力をもって調査するならば,

客観的にみて本件各契約の締結又は代金の支出について

監査請求をするに足りる程度にその存在及び

内容を知ることができたというべきである。

 

ところが,上記各決算説明書が一般の閲覧に供されて市の住民が

その内容を了知することができるようになった時期は,

原審の確定するところではなく,記録上も明らかではないから,

本件監査請求がその時から相当の期間内に行われたものであるか否かを

判断することはできないといわざるを得ない。

 

以上によれば,原審の前記判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,

上告理由について判断するまでもなく,原判決は破棄を免れない。

 

そして,上記の点につき更に審理を尽くした上,

本件監査請求に法242条2項ただし書にいう

正当な理由があるか否かについて判断させるため,

本件を原審に差し戻すのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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