地方自治法243条の2第1項後段の規定による損害賠償責任

(平成20年11月27日最高裁)

事件番号  平成19(行ヒ)215

 

この裁判は、

県が職員の退職手当に係る源泉所得税を法定納期限後に納付したため

不納付加算税等の納付を余儀なくされた場合において,

源泉所得税の納付に必要な出納長に対する払出通知が遅滞したことにつき,

同払出通知に関する専決権限を有する職員に重大な過失はなく,

同職員は県に対し地方自治法

(平成18年法律第53号による改正前のもの)243条の2

第1項後段の規定による損害賠償責任を負わないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 法243条の2第1項後段の規定する

予算執行職員等の損害賠償責任は,

故意又は重大な過失により違法に

「当該行為をしたこと又は怠ったこと」に基づく責任であるから,

その責任が生ずるためには,

予算執行職員等自身が故意又は重大な過失により

違法な行為をし又は違法に職務を怠ったと認められることが必要であり,

予算執行職員等は,これに該当しない職員の補助を受けて

その職務の執行をする場合においても,

その補助職員が違法な行為をしたこと又は

違法に職務を怠ったことにつき,

当然に自らの行為と同視されてその責任を問われるものではない。

 

(2) 前記事実関係によれば,平成13年5月当時,

財務課の所掌事務は,約2万7000人の

教職員の人件費全般に関する事務を始め,

県教育委員会事務局及び教育機関の

予算の執行に関する事務に広く及ぶもので,

財務課長が指揮監督すべき職員は26名であったというのであるから,

その事務内容,事務量や課の規模からして,

前記のとおり,上告人が通常の業務について

個々の文書の起案の時期等を

その都度部下に指示することまではせず,

その処理を各担当の部下に任せていたことは,

特に非難されるべきことではない。

 

そして,前記事実関係によれば,

本件源泉所得税の納付に係る払出通知に関する事務は

財務課の通常の業務に属するところ,

それまで,財務課においては,払出通知が遅滞したために

源泉所得税の納付が法定納期限後となる

事態に至ったことはなかった上,

この通知の事務にかかわる部下はB,C及び

Aの3名がいたというのであるから,

そのいずれもが同年4月1日に

着任したばかりであったことを考慮しても,

上記3名全員がこれを怠り法定納期限を徒過する事態が発生することは,

上告人において容易には想定し

難いことであったというべきである。

 

そうすると,上告人がわずかの注意さえすれば上記事態を予測し,

これを未然に防止するための措置を

講ずることができたものということは困難である。

 

なお,同12年7月に県総務部財政室において

源泉所得税の法定納期限を徒過する事態が発生していたが,

これが財務課において注目されることはなく,

上告人も知らなかったというのであるし,また,

同13年2月13日に財務課において

緊急払出手続が執られる事態が発生した際も,

上告人自身はその事実を知らなかったというのであるから,

これらの事実を基に,上告人において容易に上記のような予測や

過誤発生の防止をすることが可能であったということもできない。

 

以上の事情を総合的に考慮すれば,

本件源泉所得税の納付に係る払出通知が遅滞したことについて,

上告人が著しく注意義務を怠ったということはできず,

上告人に重大な過失があったとまでは認められないから

上告人が県に対し法243条の2第1項後段の規定による

損害賠償責任を負うものということはできない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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