売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記のされた不動産の第三取得者と予約完結権の消滅時効の援用
(平成4年3月19日最高裁)
事件番号 平成2(オ)742
最高裁判所の見解
民法一四五条にいう当事者として消滅時効を援用し得る者は、
権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されるところ、
売買予約に基づく所有権移転請求権保全仮登記の経由された
不動産につき所有権を取得してその旨の所有権移転登記を経由した者は、
予約完結権が行使されると、いわゆる仮登記の順位保全効により、
仮登記に基づく所有権移転の本登記手続につき承諾義務を負い、
結局は所有権移転登記を抹消される関係にあり
(不動産登記法一〇五条、一四六条一項)、
その反面、予約完結権が消滅すれば所有権を
全うすることができる地位にあるから、
予約完結権の消滅によって直接利益を受ける者に当たり、
その消滅時効を援用することができるものと
解するのが相当である。
これと見解を異にする大審院の判例
(大審院昭和八年(オ)第一七二三号同九年五月二日判決・
民集一三巻六七〇頁)は変更すべきものである。
したがって、被上告人らは本件予約完結権の消滅時効を
援用し得る当事者であるとした原審の判断は
正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
論旨は採用することができない。
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