宅地建物取引業保証協会の入会資格要件

(平成16年11月26日最高裁)

事件番号  平成15(受)1710

 

この裁判は、

宅地建物取引業保証協会が宅地建物取引業者からの入会申込みにつき

宅地建物取引業協会の会員でなければならないとの

資格要件を満たさないことを理由に

これを拒否したことが不法行為とならないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 保証協会は,宅地建物取引業者が社員となって設立される社団法人であり,

その業務として,社員の取り扱った宅地建物取引業に係る取引に関する

苦情の解決,取引主任者その他宅地建物取引業の業務に従事し又は

従事しようとする者に対する研修及び社員と宅地建物取引業に関し

取引をした者の有するその取引により生じた債権に関して

弁済をする業務を行うものである(法64条の3第1項)。

 

そして,この弁済業務については,次のように定められている。

①保証協会の社員は,当該保証協会に

弁済業務保証金分担金を納付する(法64条の9)。

②保証協会は,社員から上記納付を受けた額に相当する額の

弁済業務保証金を供託する(法64条の7)。

③保証協会の社員と宅地建物取引業に関して取引をした者は,

その取引によって生じた債権に関し,

当該社員が社員でないとした場合に供託すべき

営業保証金の額に相当する額の範囲内において,

当該保証協会が供託した弁済業務保証金から

弁済を受ける権利を有する(法64の8第1項)。

④上記権利の実行により弁済業務保証金の還付があったときは,

当該還付に係る社員又は社員であった者は,

当該還付額に相当する額の還付充当金を当該保証協会に

納付しなければならない(法64条の10)。

⑤保証協会は,上記権利の実行があった場合においては,

その権利の実行により還付された弁済業務保証金の額に相当する額の

弁済業務保証金を供託しなければならない(法64条の8第3項)。

 

さらに,保証協会は,上記供託をする場合において

上記還付充当金の納付がなかったときの

弁済業務保証金の供託に充てるため,

弁済業務保証金準備金を積み立てなければならない(法64条の12第1項)。

 

上記供託をする場合において,

上記準備金を弁済業務保証金に充ててなお不足するときは,

その不足額に充てるため,社員は,保証協会に対し,

特別弁済業務保証金分担金を

納付しなければならない(法64条の12第3項,第4項)。

 

(2) 以上によれば,保証協会の上記弁済業務に係る制度は,

宅地建物取引業者の営業上の取引による債務の支払を担保するために

宅地建物取引業者がすべきものとされている営業保証金の供託を,

保証協会の社員が納付した弁済業務保証金分担金を原資として

保証協会が行う弁済業務保証金の供託によって代替するものであり,

保証協会の社員と宅地建物取引業に関し

取引をした者との間の取引により生じた債権については,

保証協会及びその社員の負担において,

上記債権の支払が担保される仕組みとなっている。

 

そうすると,保証協会としては,入会を申し込む個々の

宅地建物取引業者の信用性,その者が関係法令を

遵守する業者であるか否か等について重大な利害関係を有するものであり,

上記弁済業務に係る制度を適切に運営し,

これを維持するために,保証協会が,その入会資格につき,

上記の入会者の関係法令の遵守等の観点からの

一定の資格要件を定めることには十分な合理性があるというべきである。

 

 

前記の事実関係及び記録によれば,上告人は,

全宅連及び都道府県宅建業協会との間で,

上告人の業務中,取引主任者その他宅地建物取引業の業務に従事し又は

従事しようとする者に対する研修業務を共同で実施しており,

社員の取り扱った宅地建物取引業に係る取引に関する

苦情の解決に係る業務を委託するなど密接な関係にあること,

各種の情報が都道府県宅建業協会からその会員に提供されること,

上告人としては,このような関係にある都道府県宅建業協会の会員であって,

その指導,監督の下にある宅地建物取引業者であれば,

上記研修の実施等により,入会者の関係法令の遵守等が

相当程度期待し得るものとして,

本件入会資格要件を定めたことが明らかである。

 

そうだとすると,本件入会資格要件は,入会者の関係法令の

遵守等の観点から定められた合理的なものというべきであり,

公序良俗に違反するものとはいえない。

 

また,本件定款は,入会等につき,入会しようとする者は

理事会の承認を得なければならない旨を定めており(6条1項),

本件定款の実施細目として,本件定款の施行について必要な事項は,

会長が理事会の議決を得て別に定めるものとしている(42条)。

 

この規定に基づき,理事会の議決を得て

定められた本件規則3条1項所定の本件入会資格要件は,

本件定款所定の上記の入会の要件である

「理事会の承認」を得るために不可欠な条件を,

本件定款の施行について必要な事項の

一つとして定めたものと解することができ,

本件定款に違反するものということはできない。

 

以上の諸点に,宅地建物取引業者は,保証協会に入会しなくても,

法25条所定の営業保証金を供託することにより

宅地建物取引業を営むことができるものであることを併せ考慮すると,

上告人が,被上告人に対し,

被上告人が本件入会資格要件を満たさないことを理由に,

その入会申込みを拒否した行為をもって,

慰謝料請求権の発生を肯認し得る不法行為と評価することは

できないものというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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