宗教法人の代表役員等の地位にあることの確認を求める訴え

(平成5年11月25日最高裁)

事件番号  平成2(オ)508

 

最高裁判所の見解

一 本件は、上告人が宗教法人である被上告人に対し、

その代表役員及び責任役員の地位にあることの確認を求める訴えと、

被上告人が上告人に対し、本件建物の所有権に基づき、

その明渡しを求める訴えとが併合審理されているものである。

 

そして、記録によれば、被上告人の主張は、

被上告人の代表役員は責任役員を兼ね、

その主管に任命された者をもって充てることとされているところ、

上告人は、被上告人の包括宗教法人であるD宗により、

その宗規に定める懲戒事由である

「正当の理由なくして宗務院の命令に従わない者」に当たるとして、

被上告人の主管の地位を罷免する

懲戒処分(以下「本件処分」という。)を受けたから、

被上告人の主管ないしは代表役員等の地位を喪失し、

本件建物の占有権原をも失った、というのに対し、

上告人の主張は、本件処分は、上告人等が

宗務院の第五回全国檀徒大会の中止命令(以下「本件命令」という。)に

従わなかったことを原因とするものであるところ、

上告人等が本件命令に従わなかったことには、

右の宗規にいう「正当の理由」があるなどとして、

本件処分の無効を理由に、上告人は、依然として

被上告人の主管ないし代表役員等の地位にあるから、

本件建物の占有権原をも有する、というのである。

 

以上の双方の主張によれば、上告人及び被上告人の訴えは、

いずれも本件処分の効力の有無によって

請求の当否が決まる関係にあるところ、

右の点の判断をするためには、上告人が

本件命令に従わなかったことに正当の理由があるかどうかを

確定しなければならないことは、多言を要しない。

 

二 原審は、本件処分の効力を審理、判断するに当たり、

右の懲戒事由にいう「正当の理由」には、

D宗の教義、信仰にかかわる事由は含まれず、また、

信者の教化育成の在り方その他宗教上の事由をもって

本件命令の効力を争うこともできないと判示し、

その見地から、本件処分がD宗の懲戒処分に関する

手続上の準則に従ってされたものであるか否かを検討し、

その結果、本件処分を有効と認め、上告人の請求を棄却して

被上告人の請求を認容した第一審判決を正当とし、

上告人の控訴を棄却した。

 

三 しかしながら、記録によって認められる

本訴提起に至った本件紛争の経緯、双方の主張及び

本件訴訟の経過に照らせば、本件命令は、

D宗の教義ないし信仰の内容に基づいて発せられたものであり、

したがって、上告人の主張する正当の理由もまた、

D宗の教義ないし信仰の内容にかかわるものであることは明らかである。

 

そうであるとすると、本件訴訟の争点である

本件処分の効力の有無を判断するには、

宗教上の教義ないし信仰の内容について一定の評価をすることを

避けることができないのであるから、

原審の前記判断を是認することはできず、

上告人及び被上告人の訴えは、いずれも、

結局、法律上の争訟性を欠き、不適法というべきである

(最高裁昭和六一年(オ)第九四三号平成元年九月八日第二小法廷判決・

民集四三巻八号八八九頁参照)。

 

論旨は、以上と同旨をいう点において理由があり、

本件につき本案の判断をした第一審判決及び

これを前記の見地から正当とした原判決には、

法令の解釈適用を誤った違法があり、

その違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、

原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、

上告人及び被上告人の訴えをいずれも却下することとする。

 

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