家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物を公衆に譲渡する権利と複製物の再譲渡

(平成14年4月25日最高裁)

事件番号  平成13(受)952等

 

原判決が適法に確定した事実関係の下においては,

本件各ゲームソフトが,

著作権法2条3項に規定する「映画の効果に類似する視覚的又は

視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され,かつ,

物に固定されている著作物」であり,

同法10条1項7号所定の「映画の著作物」に当たるとした

原審の判断は,正当として是認することができる。

 

そして,本件各ゲームソフトが映画の著作物に該当する以上,

その著作権者が同法26条1項所定の

頒布権を専有するとした原審の判断も,

正当として是認することができる。

 

特許権者又は特許権者から許諾を受けた

実施権者が我が国の国内において当該特許に係る製品を譲渡した場合には,

当該特許製品については特許権はその目的を

達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,

当該特許製品を再譲渡する行為等には及ばないことは,

当審の判例とするところであり

(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・

民集(ウ) 他方,著作権者は,著作物又はその複製物を自ら譲渡するに当たって

譲渡代金を取得し,又はその利用を許諾するに当たって

使用料を取得することができるのであるから,

その代償を確保する機会は保障されているものということができ,

著作権者又は許諾を受けた者から譲渡された著作物又は

その複製物について,著作権者等が二重に

利得を得ることを認める必要性は存在しないからである。

 

ところで,映画の著作物の頒布権に関する著作権法26条1項の規定は,

文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約

(1948年6月26日にブラッセルで改正された規定)が

映画の著作物について頒布権を設けていたことから,

現行の著作権法制定時に,条約上の義務の履行として

規定されたものである。

 

映画の著作物にのみ頒布権が認められたのは,

映画製作には多額の資本が投下されており,

流通をコントロールして効率的に資本を回収する必要があったこと,

著作権法制定当時,劇場用映画の取引については,

前記のとおり専ら複製品の数次にわたる貸与を

前提とするいわゆる配給制度の慣行が存在していたこと,

著作権者の意図しない上映行為を規制することが困難であるため,

その前段階である複製物の譲渡と貸与を含む頒布行為を

規制する必要があったこと等の理由によるものである。

 

このような事情から,同法26条の規定の解釈として,

上記配給制度という取引実態のある映画の著作物又は

その複製物については,これらの著作物等を公衆に提示することを

目的として譲渡し,又は貸与する権利(同法26条,2条1項19号後段)が

消尽しないと解されていたが,同法26条は,

映画の著作物についての頒布権が消尽するか否かについて,

何らの定めもしていない以上,消尽の有無は,

専ら解釈にゆだねられていると解される。

 

そして,本件のように公衆に提示することを目的としない

家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物の譲渡については,

市場における商品の円滑な流通を確保するなど,

上記(ア),(イ)及び(ウ)の観点から,

当該著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,

いったん適法に譲渡されたことにより,

その目的を達成したものとして消尽し,

もはや著作権の効力は,当該複製物を公衆に

再譲渡する行為には及ばないものと解すべきである。

 

なお,平成11年法律第77号による改正後の

著作権法26条の2第1項により,映画の著作物を除く著作物につき

譲渡権が認められ,同条2項により,

いったん適法に譲渡された場合における譲渡権の消尽が規定されたが,

映画の著作物についての頒布権には譲渡する権利が含まれることから,

譲渡権を規定する同条1項は映画の著作物に適用されないこととされ,

同条2項において,上記のような消尽の原則を

確認的に規定したものであって,同条1,2項の反対解釈に立って

本件各ゲームソフトのような映画の著作物の複製物について

譲渡する権利の消尽が否定されると解するのは相当でない。

 

そうすると,本件各ゲームソフトが,

上告人らを発売元として適法に販売され,

小売店を介して需要者に購入されたことにより,

当該ゲームソフトについては,頒布権のうち譲渡する権利は

その目的を達成したものとして消尽し,もはや著作権の効力は,

被上告人らにおいて当該ゲームソフトの中古品を公衆に

再譲渡する行為には及ばない。

 

所論の点に関する原審の判断は,正当として是認することができ,

原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

 

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