家畜改良増殖法29条所定の「正当な理由」

(平成13年12月13日最高裁)

事件番号  平成13(受)331

 

最高裁判所の見解

(1) 家畜人工授精師の免許を有する被上告人は,

上告人が開設する家畜人工授精所である兵庫県立中央農業技術センターに対し,

県有黒毛和種種雄牛の人工授精用精液の購入を申し込んだが,

同センターは,上告人において,兵庫県知事が定めた

家畜改良増殖計画(法3条の3)を最も効率的に実施するため

県内の畜産農家の協力を得て黒毛和種肉用牛を改良するシステムを構築し,

上告人が所有する黒毛和種種雄牛精液を

県内の畜産農家に限って提供することにしているとして,

被上告人が兵庫県内の畜産農家でないことを理由に,

同申込みを拒絶した。

 

(2) 被上告人は,兵庫県の住民であるが,

兵庫県内では牛を飼育せず,高知県内で牛を飼育している。

 

2 法29条は「家畜人工授精所の開設者は,

その家畜人工授精所において

家畜人工授精用精液の提供を求められたときは,

正当な理由がなければ,これを拒んではならない。」と規定している。

 

同条の趣旨は,法12条により,

原則として家畜人工授精所等以外の場所では家畜人工授精用精液の

採取,処理を行うことができないこととされていることから,

家畜人工授精用精液の利用者の利益を保護するため,

家畜人工授精用精液の採取,処理を行う家畜人工授精所の開設者は,

その授精所において家畜人工授精用精液の提供を求められたときは,

正当な理由がなければこれを拒むことができないとするものである。

 

他方,法は,国及び都道府県が家畜の改良増殖の促進に

有効な事項を積極的に行わなければならないものと定め(2条1項),

そのため都道府県知事は,

家畜改良増殖計画を定めることができるものとし(3条の3),

都道府県が国と並んで家畜の改良増殖を促進し,

もって畜産の振興を図り,あわせて農業経営の改善に

資することとなるように努めるべきものとするが(1条参照),

都道府県のこれら責務は,その性質上,

当該都道府県内の家畜,畜産及び農業を対象とし,

直接には他の都道府県のものを対象とするものではない。

 

したがって,都道府県が開設する家畜人工授精所において,

同所が改良した種雄牛の精液を当該都道府県内の

畜産農家に優先的に提供することは,

法の禁止するところではないものと解される。

 

その結果,当該精液が都道府県内の需要を満たし得ないような場合は,

他の都道府県の畜産農家への提供を拒むことは,

法29条の正当な理由があるものとして

許されるものというべきである。

 

しかし,このような当該精液の需給状況と無関係に,

その提供を求める者が当該都道府県内の

畜産農家ではないことの一事のみをもって,

提供を拒むことは,同条の前記の趣旨よりして,

正当な理由があるものとはいえない。

 

そうすると,被上告人が兵庫県内の

畜産農家でないということだけをもって

上告人が家畜人工授精用精液の提供を拒否することは

法29条の正当な理由に当たらないとした原審の判断は,

是認することができる。

 

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