無効審決取消訴訟の係属中に当該特許権について特許請求の範囲の減縮を

目的とする訂正審決が確定した場合における当該無効審決の取消しの要否

(平成11年4月22日最高裁)

事件番号  平成10(行ツ)81

 

最高裁判所の見解

1 被上告人は、名称を「D」とするE(以下「本件発明」という。)の

特許権者である。本件発明に係る特許(以下「本件特許」という。)について、

特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の

特許請求の範囲第一項及び第二項の記載は、別紙一のとおりである。

 

2 上告人は、平成五年九月一四日、特許庁に対し、

本件特許を無効にすることについて審判を請求し、

平成五年審判第一八〇四一号事件として審理された結果、

平成七年一二月二二日、本件明細書の特許請求の

範囲第一項及び第二項に記載された発明に係る特許を

無効にすべき旨の審決(以下「本件無効審決」という。)が

された。被上告人は、平成八年二月八日、

本件無効審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

 

被上告人は、平成八年一一月一三日、本件明細書の特許請求の

範囲の記載等を訂正することについて審判を請求し、

平成八年審判第一九二六六号事件として審理された結果、

本件訴訟の原審口頭弁論終結の前である平成九年一月八日、

右訂正をすべき旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)がされ、

確定した。本件訂正審決により、

本件明細書の特許請求の範囲第一項及び第二項の記載は、

別紙二のとおりに訂正された。

 

特許を無効にすべき旨の審決(以下「無効審決」という。)の取消しを

求める訴訟の係属中に、当該特許権について、

特許出願の願書に添付された明細書の特許請求の範囲が、

明細書を訂正すべき旨の審決(以下「訂正審決」という。)により減縮され、

訂正審決が確定した場合には、当該無効審決を

取り消さなければならないものと解するのが相当である。

 

その理由は、次のとおりである。

審決に対する訴え(以下「審決取消訴訟」という。)において、

審判の手続で審理判断されなかった公知事実との対比における

無効原因は審決を違法とし又はこれを適法とする理由として

主張することができないことは、当審の判例とするところである

(最高裁昭和四二年(行ツ)第二八号同五一年三月一〇日大法廷判決・

民集三〇巻二号七九頁)。明細書の特許請求の範囲が

訂正審決により減縮された場合には、

減縮後の特許請求の範囲に新たな要件が

付加されているから、通常の場合、訂正前の明細書に基づく

発明について対比された公知事実のみならず、

その他の公知事実との対比を行わなければ、

右発明が特許を受けることができるかどうかの判断をすることができない。

 

そして、このような審理判断を、

特許庁における審判の手続を経ることなく、

審決取消訴訟の係属する裁判所において第一次的に行うことは

できないと解すべきであるから、

訂正後の明細書に基づく発明が特許を受けることができるかどうかは、

当該特許についてされた無効審決を取り消した上、

改めてまず特許庁における審判の手続によって

これを審理判断すべきものである。

 

もっとも、訂正後の明細書に基づく発明が無効審決において

対比されたのと同一の公知事実により無効とされるべき場合が

あり得ないではないが、特許法は、一二三条一項八号において、

一二六条四項に違反して訂正審決がされたことが

特許の無効原因となる旨を規定するから、

右のような場合には、これを理由として改めて

特許の無効の審判によりこれを無効とすることが

予定されているというべきである。

 

三 そうすると、本件訂正審決による本件明細書の

特許請求の範囲の前記訂正のうち、

ロール軸交叉装置及びロール間隙調整装置が

所定のロールに分けて備えられる構成が

付加された点並びに各ロール周速及び

各ロール間のバンクの回転についての構成が付加された点は、

特許請求の範囲の減縮に当たるものであるから、

本件無効審決はこれを取り消すべきものである。

 

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